これまでは米軍支援のアフガニスタン政府が存在していたが、タリバン暫定政権となったことで、米国が今後どこまで情報収集・共有できるかは不透明な状況になった。一方、近年テロが増加傾向にあるアフリカでは、特にアルカイダやイスラム国を支持する武装勢力が活発に活動するサヘル地帯でフランスが軍事的関与を薄める傾向にあり、同地域が新たなテロの温床になることを危惧する声も少なくない。
もう一つは、国際社会の関心低下である。昨今はロシアのウクライナ侵攻が大きな問題となっているが、まさに主要国を中心とする国際社会の関心事が国家間イシューに集中し、テロ問題に割かれる時間や資金などが大幅に少なくなる可能性がある。
コロナ後に訪れ得るテロ活動の活発化
この20年間、9.11から02年10月のインドネシア・バリ島ディスコ爆破テロ、08年11月のインド・ムンバイ同時多発テロ、13年1月のアルジェリア・イナメナスガスプラント施設襲撃テロ、16年7月のバングラデシュ・ダッカレストラン人質テロ、19年4月のスリランカ同時多発テロなど、日本人は断続的にイスラム過激派によるテロに巻き込まれてきた。
日本の企業や官庁の情報収集・共有先として欧米諸国への依存は大きい。しかし、米国などが対外的関与を薄め、中国やロシアなどとの国家間競争に主軸を置いていく今後においては、中東やアフリカなどのテロ情報が発信、報道される機会が減少し、一般的な情報収集が難しくなる恐れも考えられよう。
コロナ禍が落ち着く流れになれば国境を越えたヒト、モノの移動が再び活発化することになろう。その時には中東やアフリカのテロ情勢が今日より悪化している可能性は十分にある。
海外に進出する日本企業においては、今まで以上に自主的かつ積極的にテロに関する情報を収集、分析、共有するという姿勢が求められよう。