学歴で異なるロシア対応の支持率
米ワシントン・ポスト紙とABCニュースの共同世論調査では、バイデン氏のロシア対応に関して33%が支持、47%が不支持と回答した。不支持が支持を14ポイント上回った。
ただし学歴別にみると、バイデン氏のロシア対応に対する評価が異なる。高卒以下は支持が29%、不支持が45%であり、不支持が支持よりも16ポイントも高い。
ところが大卒は支持が38%、不支持が45%で、その差が7ポイントまで低下した。大学院卒になると支持が48%に上昇し、不支持が43%に下がり、支持が不支持を3ポイント逆転した。
「米国第一主義」の影響?
バイデン氏が直面している理想と現実との乖離は、大学院卒と大卒においては高卒ほど大きくない。高学歴になるほど、バイデン氏が訴える自由と自己犠牲の精神に基づいたウクライナ支援が支持されていることが分かる。
では、なぜ高卒以下はバイデン氏の理想を受容しない傾向があるのか。
高卒以下はトランプ支持者が多く、彼らは「米国第一主義」の信奉者だ。もちろんトランプ支持者も自由を尊重するのだが、今回のロシアとウクライナの衝突で見えてくるのは、彼らの「内向き思考」である。率直に言ってしまえば、彼らは他国における自由の擁護にほとんど価値を置いていないのだ。
ウクライナ危機を利用して分断を煽るトランプ
トランプ前大統領は2月26日、南部フロリダ州で開催された保守政治行動会議(CPAC:シーパック)で演説を行い、バイデン氏の理想と現実のギャップをさらに拡大させるために「2つの国境」に焦点を当てた。バイデン政権は移民が不法入国する米国とメキシコとの国境よりも、ウクライナとロシアの国境を優先していると痛烈に批判した。
その上で、ウクライナの自由を守るために米国民に犠牲を求めるバイデン氏を厳しく非難したのだ。
トランプ前大統領の狙いはこうだ。バイデン大統領のロシア対応を支持する米国民と、ウクライナのための自己犠牲に反対する米国民の分断を煽り深めることである。
トランプ氏は今回のウクライナとロシアの衝突を機に、米国民が反ロシアで団結し、米国社会が統一することを阻止したいのだ。というのは、トランプ前大統領の視線の先にあるのは今秋の中間選挙と24年の大統領選挙である。米国社会の統一は、双方の選挙においてバイデン氏に多大なアドバンテージを与えてしまう。
トランプ氏にはウクライナ危機は分断を煽り維持するための「道具」でしかない。