フランス大統領選は、4月10日に投票が行われ、過半数を得た候補者がいなければ同24日に決選投票が行われることになる。
マクロン大統領は、なかなか再選出馬を表明しなかったが、締め切り期限の前日、3月3日に、大統領選挙への立候補を表明し、4日付のローカル紙に「同胞への手紙」という文書を掲載し、立候補の意図や背景、重視する政策の方向性を示した。立候補の宣言を遅らせたことは、当初より1つの選挙戦術であったと思われるが、このタイミングとなったことについては、コロナ対策やウクライナ問題への対応に追われたことによる。
エコノミスト3月5日号の社説は、2期目の政権構想について十分な議論を行わない場合には、マクロンが当選したとしてもその政権運営に悪影響が生ずると反マクロン陣営からは、候補者間での議論の時間が足りず、民主主義のルールを軽視した選挙戦術だとの批判も出ている。
世論調査では、常にマクロンが25%前後で1位、12月までは、共和党のペクレスが2位に付け、決戦投票ではマクロンと接戦となるとの予想もあった。しかし、1月に入りペクレスは失速し、ルペンやゼムールにも後れを取り4位に後退している。
その原因は、選挙集会でのパフォーマンスが悪く政治家としてのカリスマ性に欠けるとの印象を与えたこと、政策的にも党内右派強硬派の支持を得るために移民問題やEUとの関係について、極右派に迎合するような発言をしたことなどがある。党内の有力者の中にマクロンや極右派への支持を表明するものも出てきており、重鎮のOBであるサルコジ元大統領は、ペクレスへの支持を未だに表明していない。
ルペンとゼムールは、共にこれまでプーチンを理想的指導者として礼賛していたことが、ロシアのウクライナ攻撃を契機に強い批判を浴びており、移民問題についてもウクライナからの難民を巡り歯切れが悪く、直近の世論調査ではいずれも支持率を落としている。特に、ルペンは、かつてロシアによるクリミア併合を許容する発言を行い、選挙資金をロシアの銀行から借りるなど、ロシアと近かっただけに今後更に支持率に影響が出るのではないかと思われる。
ウクライナ問題でマクロンは更に優位となったようだ。マクロンは、ウクライナ問題で何度もプーチンと交渉を行い、結局プーチンの行動をやめることは出来なかったが、メディアは、フランス国民はその努力を評価していると見ている。