2022年10月3日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月23日

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 Carnegie Europeのローザ・バルフォア所長が、3月8日付の同研究所のサイトで、ロシアのウクライナ侵攻が欧州で誘発した歴史的な変動など、欧州に対して持つ意味合いを論じている。

AlexanderZam / Stock / Getty Images Plus

 バルフォアの論説は、末段に書かれていること、即ち、ウクライナ危機を契機として「欧州連合(EU)がより広い世界との関わり合いを犠牲にして、欧州の能力と強靭性に焦点を当てた内向き指向に陥ることがあってはならない」と指摘するために書かれたものかも知れない。確かに、EUは、ロシア政策について結束することを最も不得手として来たが、ロシアの脅威に目覚め、EUおよび加盟国は一致して制裁を発動する一方、防衛力の向上に注力し、東欧やバルカン対策の強化に舵を切ることとなるであろう。

 しかし、そのことが世界との関わり合いの犠牲において進行するとは考えられない――若干の懸念事項に言及があるが説得性があるとも思われない。むしろ、既存の秩序を脅かすロシアや中国に対抗するために、EUがこれまで以上に世界と連帯する方向にウクライナ危機は働くのではないかと思われる。

 もし、プーチンがクリミア半島やウクライナ東部で採用したようなグレーゾーンの方策でウクライナを締め上げる戦略を採用しておれば、欧州が歴史的な転換をすることにはならなかったであろうとのバルフォアの論説の観察は正しいと思われる。西側諸国が協調した大規模な制裁や西側企業のロシア撤退の事態も避けられたかも知れない。

 ウクライナを傀儡国家とすることが目標だとして、グレーゾーン戦略では不都合な事情があったようには思えない。何故プーチンがそうしなかったかは謎である。

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