2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月25日

 ルペンやゼムールがウクライナ問題の逆風を乗り越えるのは難しいように思える。ペクレスも、欧州連合(EU)を強化することがフランスの利益となるとの外交的信念、気候変動への対応や先端技術の開発、年金制度の改革や教育の機会均等といった課題を明確化しているマクロンに対抗できるだけの構想を提示するのは難しいように思える。

マクロンの功績と弱点

 マクロンは、毀誉褒貶はあるが、労働市場の近代化のための労働法改正、フランス国鉄の改革、年金改革などの経済改革やEUにおけるリーダーシップの面においてはかなりの成果を上げたと評価すべきであろう。そして、新型コロナについても収束の兆しが見えてきていることはマクロンにとり更なる追い風である。

 対外政策については、EU政策において、メルケルとのコンビで2019年のEU議会選挙で親EU中道派の勝利を実現し、20年にはコロナ復興支援のためのEU債を財源とする画期的な大型予算を成立させた。また、気候変動対策としてEU委員会が原子力発電を「グリーン」なエネルギーと認定したこともフランスの国益に大いに資するものだ。

 マクロンが再選されれば、内外において更なるリーダーシップを発揮しようとするであろう。弱点は、国内では与党「共和国前進」の基盤が依然として極めて弱いことである。従って、マクロンにとっては、短い選挙戦の間に第2期政権の構想を十分に国民に浸透させるためにも、他の候補者と議論を尽くす必要がある。決戦投票がルペンとの戦いとなることが、選挙後の政局運営の上でも都合が良いということになろう。

 外交面では、プーチンとのある種の個人的な信頼関係を、妥協を拒否するプーチンとバイデン政権との間で、また、EU、北大西洋条約機構(NATO)の結束を優先させなければならない中でどう活かせるのか疑問ではあるが、今後の情勢の展開にもよるであろう。従来の持論である、EUの「戦略的自律」の具体化については、新たな状況に応じた調整が必要と思われる。

   
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