2024年7月16日(火)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年4月11日

 地位協定の問題については、何よりも日本の司法改革が進んで、被疑者の取り調べにおける弁護人の同席など、冤罪を防ぐ仕組みが導入されれば、前進の可能性がある。勿論、地位協定のために司法改革を行うのは、主権国家として本末転倒であるが、この問題を無視して、一方的に米軍を犯罪者扱いするというのは両国の関係を不幸にするだけだ。

 在日米軍については、勿論米国に取っては戦利品という意味合い、そして日本軍国主義復活を防止する「ビンの蓋」という意味合いも否定できない。だが、この2つの目的は、非公式のもので、両国関係の複雑な要素の一部に過ぎない。とにかく、真の目的は自由世界を守り、東アジアにおける戦火を抑止するというのが共通の利害であり、目的である。米国の多くの若者は、そのために危険を顧みることなく、任務に就いている。

日本が平和を享受できた所以

 ロシア=ウクライナ戦争という世界的な事件の中で、西側同盟の結束が改めて問われている。日本は北大西洋条約機構(NATO)のメンバーではないが、その代わりに日米安全保障条約により、強く西側同盟と一体化しており、そのために在日米軍の存在がある。

 もっと言えば、戦後の日本は、「サンフランシスコ講和」「日本国憲法の制定」「国連憲章の成立と日本の加盟」「日米安全保障条約」という4点セットによって、改めて「国体=国のかたち」を定義し、その定義の下で70年におよぶ平和を享受してきた。一方で、米国もこの4点セットに深く関与する中で、孤立主義とは訣別し、自らの「国のかたち」を変更して太平洋国家として歩んでいる。

 危機の中で、この同盟の根幹について改めて本質的な理解がされるように、議論を深めていきたい。

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