冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年4月11日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 ロシア=ウクライナ戦争の厳しいニュースが連日のように飛び込む中、日本の政治家、特に野党政治家の発言には大きな「幅」がある。最近でこそ、トランプ派や極端な左派など、米国の政治にも良くない意味で「幅」が出てきた。だが、基本的には、実現可能な政策パッケージを掲げて二大政党が競う米国から見れば、日本の政界の抱える「幅」は理解が難しい。

共産党の志位和夫委員長はじめ野党の極端な発言が米国に違和感を覚えさせる(つのだよしお/アフロ)

 例えば、日本共産党の志位和夫委員長は「ロシアの侵略を見て『日本の平和は大丈夫か』と心配する声があるが、相手が軍事や核兵器の論理で来たときに、同じ論理で対抗して『軍事対軍事』の悪循環に陥ることがいちばん危険だ。憲法9条を生かす外交戦略こそ、いま必要だ」と指摘したそうだ。

 確かに米国から見れば「幅」の振れ方としては極端である。ただ、同じ発言の中で、志位氏は「無抵抗主義ではなく、個別的自衛権は存在している。万が一、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守りぬくのが党の立場だ」と述べたそうで、従前の立場から見れば現実に歩み寄ったとも言える。

 一方で、維新の会に強い影響力を持つ橋下徹氏は、「一般市民は戦闘が始まりそうならまず避難。災害対策と同じです。戦うことだけに熱くなってはいけません。(中略)とにかく一刻でも早く一般市民が逃げる仕組みをとることです。逃げるのはダメ、戦わなければならないという雰囲気になることは絶対にダメです」と発信している。

 こちらの発言については、最近の先進国に見られる保守主義には、軍事的な愛国主義とは距離を置く姿勢があり、これとの類似と思えば理解はできる。米国のトランプ主義、フランスのルペン主義など、集団安全保障に背を向けて極端な自国中心主義、自己中心主義から、軍事面でのエリート主義からくる「勇敢さ」や「正義」といった思想を叩く考え方である。

米国が「日本を見捨てる口実」にも

 志位氏や橋下氏の発言が抱えている問題は、例えばトランプ時代がそうであったように、米国が極端な自国中心主義から、集団安全保障におけるコストとリスクの負担から「降りようと」した場合に、格好の口実とされる危険性だ。つまり、日本が危険に晒されているのに、米軍がリスクに直面しながら防衛行動に回る一方で、日本国内には依然として軍事的なるものへの忌避や、危機を直視しない風潮があれば、米国としては「日本を見捨てる口実」になってしまう。

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