2024年4月20日(土)

勝負の分かれ目

2022年4月14日

「一流選手とやっている嬉しさがもしかしたらあった」

 「黄金のミドル」と呼ばれる群雄割拠の激しい階級で世界トップクラスとのマッチアップがいかにハードワークであり、危険と紙一重の戦いであるのか。それを分かっているからこそ村田もゴロフキンとの試合後、リング上で「2人が無事にリングから降りられることを神様に感謝したいと思います」と述べたのであろう。

 リングを下りた後の会見では「プロになって全然楽しくなくて、勝たないといけないし、金メダルを獲ってなかなかプレッシャーがあった」と口にする場面があったのも印象的だった。ロンドン五輪金メダリストの肩書きに対し、周囲が必要以上にセンセーショナルな勝ち方とストーリーを追い求めたことで、期待に応え続けなければいけないと村田は人知れず延々と重圧に苛まれていた。

 そこでようやく実現のチャンスが到来したのが、プロ入りから目標にし続けてきたゴロフキンとの歴史的一戦。本田会長から「楽しんで来い」とゲキを飛ばされ、リング上でも時折笑顔を浮かべていたことについて村田は「一流選手とやっている嬉しさがもしかしたらあったかもしれない」とも振り返っている。もしも現役続行を決断するとしたら周囲からの期待に応えようとするための使命感だけではなく、GGGとの対戦で笑みを浮かべた時のように「楽しさ」も追求し続けていってほしいと願う。

 もちろん、このままボクシンググローブを置き、引退を表明することになっても頭脳明晰の村田ならば成功への道は確約されるはず。どのような第二の人生を歩み出すにしても、その才能は大きく発揮されるに違いない。

 世のビジネスパーソンも圧倒的不利の下馬評だった村田が大方の予想を覆し、ゴロフキンに積極果敢な攻めのボクシングを仕掛け〝玉砕〟した生き様に共感を覚えた人は多かっただろう。ゆっくりと体を休めた後、果たしてどんな決断を下すのか。ぜひとも注目してほしい。

   
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る