何よりもゴロフキンが試合後に必ず羽織る「GGG」のロングガウンをリング上で敗者の村田にプレゼントした極めて珍しいシーンは世界中のボクシングメディアも驚かせた。掛け値なしに村田の強さをゴロフキンが認めた証拠である。
ゴロフキンとの試合では強烈なアッパーも繰り出すなど、明らかにこれまでの村田のスタイルには組み込まれていなかった別のコンビネーションも垣間見せていた。36歳にして2年4カ月ものブランクがありながら、これだけの進化を見せられるのは脅威的だ。
「辞め時」それとも「敗北を克服」
村田は以前にも増して確実に強くなっている。だからこそ仮にゴロフキンと再戦が組まれれば「リベンジを果たせるのではないか」と期待するボクシング関係者やファンの声が少なくないのも当然のことだろう。
今後の去就について村田陣営は決断を保留している。ただ、所属する帝拳ジムの本田明彦会長は愛弟子の引退を示唆し、村田本人も11日夜に放送されたNHKの番組「クローズアップ現代」で「可能性としては、今のボクとしてはこのあたりが本当は良い辞め時なんだろうと思っています」とコメント。「でも答えは出せないので。そんな感じですかね」とも続けている。
一方で12日に帝拳ジムはWBAのヒルベルト・メンドーサ会長から村田へ手紙が届いたことを公表した。その手紙の中でメンドーサ会長は「あなたは世界中に強さを見せつけました。あなたは戦士であり、紳士であることをリングの上で再び証明した」と村田を称賛した上で「モハメド・アリやマイク・タイソンら多くの偉大なボクサーたちは、倒れてもまた起き上がった。敗北を克服する能力こそ、人間をより偉大なものにする。あなたは偉大なボクサーに敗れたが、きっともっともっと強くなって帰ってくることを確信しています。なぜなら、あなたの巧みなボクシング技術とこの高貴なスポーツに対する愛は、どんな挫折よりも大きいからです」と再起を期待するメッセージをつづっている。
引退か、あるいは現役続行か――。後者への道のりは相当な覚悟も必要とされる。ミドル級の重いパンチを今後も浴び続ければ、そのダメージは自身の肉体や脳に蓄積されていくリスクも伴う。ましてやGGGとのリターンマッチへ向けて再起へ動き出すことになれば、今後もまた強打を繰り出す世界トップランカーとの戦いが待つ。