文句なしに素晴らしい戦いだった。9日に行われたWBAスーパー・IBF世界ミドル級王座統一戦(さいたまスーパーアリーナ)で、村田諒太はゲンナジー・ゴロフキンに9回TKO負け。WBA世界ミドル級スーパー王座を失った。それでも、あのゴロフキンを相手に互角以上の試合内容で世界中のボクシング関係者やファンに強烈なインパクトを残した。
序盤からプレッシャーをかけ、果敢に前へ――。戦前から「鍵」と公言していたボディーを要所で効果的に打ち込み、ゴロフキンを下がらせる展開を作った。
中盤以降はゴロフキンが徐々にギアを上げ始め、変幻自在のコンビネーションを交えつつ多角的なパンチを繰り出していく。だが村田も動じることなく高いガードでダメージの蓄積を回避しながら、ボディーに加え右ストレートで応戦するシーンもみられ、何とか必死に圧力をかけ続けようとした。
6ラウンド以降はゴロフキンの巧者ぶりが目立つようになり、村田はペースダウン。だが連打を食らっても被弾覚悟で前に出ていく姿勢は最後まで失うことはなかった。
相手の攻め疲れを待っていたかのように9ラウンド、ゴロフキンの波状攻撃のペースが落ちたタイミングで再び接近戦を試みようと前に出たところに強烈な右フックをモロに浴びた。崩れ落ちるとセコンドからタオルが投入され、善戦も実らず壮絶な激闘は幕を閉じた。
世界中を驚かせた〝善戦〟
正直に言うが、村田がここまで世界の「GGG」を相手に戦えるとは思ってもいなかった。試合後、村田はゴロフキンを「強いというよりもうまかった」と振り返ったが、その言葉通りに最後は経験値の差から生まれた相手のインサイドワークにしてやられた感もある。
これこそが〝超一流の壁〟と言ってしまえば確かにそうかもしれない。しかしながら、この日の村田のボクシングに「もしかしたら」という可能性を感じられたことは紛れもない事実であり、それは本人も戦いながら感触としてつかみ取っていたのではないだろうか。