2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2013年3月13日

 「メルトダウン」は、原発事故の各種の調査資料と関係者400人以上のインタビュー、原子炉設計者や流体力学などの学者チームを組織して、事故の深層に迫る。

 さらに、事故の原因と想定される事実を掘り起こしたうえで、実験装置を組み立てて、シュミュレーションを行うのである。

 「実験ジャーナリズム」とでもいえよう。

冷却装置の稼働を見たことがなかった作業員たち

 取材班は、福島第1原発のメルトダウンの原因について、第1号機、2号機、3号機のそれぞれについて詳細な検討を加える。

 第1号機と第2号機では、冷却装置が異なっていた。東電の現地の対策本部は、第1号機よりも第2号機の装置のほうが複雑な構造であるために、機能が失われることを懸念し、そちらに注視していた。

 第1号機の冷却装置が稼働していれば、建屋の壁から外に向かって開いていたふたつの「豚の鼻」と呼ばれる排気口から、水蒸気が出る。事故の記録をみると、「モヤモヤした蒸気」がでたことが報告され、安心感が広がる。

 ところが、この冷却装置は40年間にわたって、稼働したことがなく、原発の作業員たちは、どのような蒸気が出るか見た者がいなかったのである。

 取材班は、米国にある第1号機と同じ型の原子力発電所を訪ねる。そこでは、4年ごとに冷却装置を稼働させている。作業員にどのような状態になるか教育するためである。

 稼働すると建屋を覆わんばかりの水蒸気が発生し、轟音がでるという。「モヤモヤ」は、稼働が停止する際の状態である。

 この事実に対して、取材班はメルトダウンを防ぐチャンスを見逃した、と断定する。

「実験ジャーナリズム」は
テレビ以外でも可能なはず

 第3号機のメルトダウンは、消防車による炉心への注水によって、防禦が図られようとした。炉心にいたる複雑なパイプラインをそこかしこで、バルブを閉めることによって、一直線に水を注ぐラインがつくられる。冷却に十分な水量が流れ込んだはずだったが、炉心はメルトダウンした。


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