学者のチームとの連携によって、このラインが本来ならまっすぐに炉心に水を入れる、直通の管となったはずが、その途中で別のルートに水が流れたことがわかる。このルートに水の浸入を防ぐポンプが、電源の喪失によって稼働しなかったのである。
取材班は、この点について、イタリアの定評のある実験施設で、当時の再現を図る。その結果、注水した水の55%が脇のルートに流れたことがわかった。
しかも、消防車による注水は、実際のところ「ぶっつけ本番」だったのである。
福島原発の事故後、炉心冷却の最後の拠り所として、各地の原発に消防自動車が配備され、建屋の注水工につなぐ訓練はなされている。しかしながら、現実に注水した場合に、どのようなルートで炉心まで達するのか、途中で脇に水が逃げることはないのか、その検証は行われていない。
原発の複雑な配管のなかから、注水ルートと、別のルートに水が流れるルートを、映像で描いていく。実験施設を使って、消防自動車から注水した水を赤く色づけて、炉心にその半分もいかないことが、超高速度カメラのスローモーションによってわかる。
番組の最後に、原発の事故の原因をこれからも調査報道していくことが淡々と語られる。
「実験ジャーナリズム」が可能なのは、テレビだけではないだろう。3.11の新聞のページをくくりながらそう思う。
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