4月24日に行われたフランス大統領選挙の決選投票では、得票率41.46%のルペン対し、現職のマクロンは58.54%で、約17%の差をつけ再選された。
これを受けた有力メディアの論調の多くは、マクロンが勝利し欧州連合(EU)政策の激変や西側の結束等への破壊的な影響を避けることができたことに安堵すると同時に、ルペンは2017年の得票率を大幅に伸ばし、フランス政治における有力な勢力としての地歩を固めたことに注目している。そして、ルペン台頭の背景として、マクロンのエリート体質や傲慢な性格、貧困層に対する配慮の欠如などを指摘し、逆にルペンが極右としての強面なイメージの払拭に務め、インフレその他の生活に密着した問題提起が、低所得層や経済的困難を抱える地域の支持を得たと評価している。
決選投票では、有権者の多くがマクロンに対する期待ではなくルペンを忌避する立場で投票したことは明らかであろう。今回の選挙でルペンが将来の大統領への有力な足掛かりを得たと見る向きも多いが、むしろルペンの政治家としての限界を示したようにも思える。
4月20日のテレビ討論会でマクロンは、ルペンのプーチンやロシアとの緊密な関係、イスラム教徒に髪を隠すヒジャブの公共の場で着用を禁ずるとの反人権的公約、ルペンはEUからは脱退せずEURO圏も離脱しないとは言うがその具体的なEU政策がEUの責任あるメンバーとしての立場と矛盾することなどを手厳しく批判したが、もっともである。
ロシア対策のための北大西洋条約機構(NATO)やEU、西側の結束の観点から、マクロンの再選は祝福すべきものであり、また、欧州や世界におけるポピュリズムの台頭を押しとどめ民主主義を守った点でも意義が大きい。それに加えて、マクロンがコロナ対策を含め対EU政策で積極的なリーダーシップをとってきたことや国内改革で成果を上げたことも正当に評価されてよいのではないだろうか。
特に、内政面では歴代政権が果たせなかった労働市場の近代化や国鉄改革を成し遂げ、年金改革にもあと一歩のところまで来ている。これらは英国やドイツではとっくに実現済みの改革であり、これができなければ競争力で劣後し経済的停滞に陥るところである。国論を二分する争点であったので、正面から評価しにくいであろうが、フランスにとり必要な改革を成し遂げた業績は重要である。