散りばめられる作り手の遊び心
篠田と麗子は、希に警察にいくのを1日待つように説得する。
ミステリー作家・秦野廉と、麗子・篠田コンビの対決が、この回のクライマックスである。
麗子は、家政婦の加奈子と事前に面接をして、「睡眠薬は何錠か?夫に食べさせた菓子は?どこで買ったのか?」などと問い詰めて、加奈子の返答があいまいなので殺人をおかしていないことを確信していた。
さらに、ミステリーファンの篠田が続ける。
「希ちゃんは、あなたのシリーズの胡桃沢が、名前から『刑事』と勘違いした。本当は『啓二』で、しかも職業はパティシエだ」
ふたりは、犯人は秦野だと断定して、その理由を尋ねる。
「新作を売りたかったのよ。13年前の作品は評論家に酷評された。今回売れなければ、わたしの作家生命は終わった」
ドラマのなかから、ミステリーの名作の跡を探し出すのも楽しい。筆者もひとつ見つけたと思っているが、どうか。遺産相続の一族の会議が終わったあと、ふたりの人物が背中をみせただけで部屋に戻ろうとしているシーン。「オリエント急行殺人事件」(1974年、シドニー・ルメット監督)を思わせる。
ストーリーからキャスティング、カメラワークまで、遊び心が感じられる。