田部康喜のTV読本

2022年5月8日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「元カレの遺言状」(フジテレビ・月曜よる9時)は、「自分を殺した犯人に全財産を譲る」という元カレの森川製薬の御曹司・森川栄治(生田斗真)の遺言をめぐって、元カノの剣持麗子(綾瀬はるか)と、相棒を組むことになった篠田敬太郎(大泉洋)が謎を解いていく異色のミステリーである。

(Wako Megumi/gettyimages)

 ドラマの発端は、篠田(大泉)が突然、麗子(綾瀬)のもとを訪れて、「栄治(生田)を殺したのは自分である」ことを証明して、彼の全財産を手に入れる代理人の顧問弁護士になって欲しい、という依頼だった。栄治が亡くなる前日に雨のなかを釣りに連れて行き、風邪をひかせたのが、死因だからだという。

 栄治の出身大学の「ミステリー研究会」先輩で、篠田は麗子とも顔見知りだった、という。麗子にその記憶はない。篠田は栄治の別荘で料理人兼管理人として無報酬で働いてきた。 第4回(5月2日)のラストの回想シーンで、この回のゲスト・宮田早苗が演じるミステリー作家・秦野廉の作品について、栄治(生田)と篠田(大泉)が賞賛するシーンで、篠田が「俺は大学を出ていないからな」とつぶやく。篠田とはそもそも何者なのか。お楽しみはこれから、といったところだろう。

過去のミステリー作品が解決のヒントに

 大手弁護士事務所に所属していた、企業弁護士の麗子(綾瀬)は、顧客に法外な料金を請求したことから、事務所をやめることになる。

 栄治(生田)の遺言状が開封された日、親族と多数の元カノが軽井沢の別荘に集まった。

 栄治とうりふたつの兄・富治(生田の二役)は、栄治から生体移植を受けて「命」をもらったことから、相続を放棄している。父親で森川製薬社長の金治(佐戸井けん太)は、栄治の遺産が他人の手に渡ることに拒否反応を示している。金治の姉・真梨子(萬田久子)、長男の拓未(要潤)、妻・雪乃(笛木優子)。

 拓未の妹で、栄治に思いを寄せていた、紗英(関水渚)……。遺産をめぐる家族が一同に集まったシーン。そして、殺人事件が起きる。栄治の遺書を読み上げた、弁護士・村山権太(笹野高史)がその直後に、タバコを吸っていると、仕込まれた毒によって殺される。

 横溝正史の名作『犬神家の一族』を想起させずにはおかない。ミステリーファンの篠田(大泉)は、アガサ・クリスティーの『ねじれた家』のようだと、麗子(綾瀬)に告げる。篠田のミステリーファンぶりが、事件の解決に役立っていくのも、このドラマの魅力である。「ねじれた家」は、ラストに意外な犯人が浮上し、死に至る名作である。このドラマ全体を暗示しているのだろうか。

関連記事

新着記事

»もっと見る