田部康喜のTV読本

2021年2月26日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(viki2win/gettyimages)

 「天国と地獄~サイコな2人~」(TBS・日曜よる9時)は、刑事・綾瀬はるかと連続殺人事件の容疑者・高橋一生の心と体が入れ替わる。ベンチャー企業の社長である、容疑者・日高陽斗(ひだか・はると)の体に入ってしまった、刑事・望月彩子(もちづき・あやこ)が連続殺人事件を追う。

 ドラマは次々に真実が明らかになり、次々に謎が生まれる。観るものが謎解きに参加するかのような錯覚に陥る、新感覚のドラマである。今シーズンのドラマの最高傑作である。

 パチンコ店の経営者である、田所仁志が口にパチンコの玉を大量に詰め込まれた状態で殺されているのが発見される。その手には空集合を意味する、ギリシャ文字の「Φ」が血のりで左手に書かれていた。実は、3年前の未解決の法務省官僚殺人事件でも、同様の文字があった。

 日高(高橋)を容疑者として追い詰めた、望月(綾瀬)は誤って石段をふたりで絡み合うように落下する。病院に運び込まれて、目を覚ましたふたりは、それぞれお互いの体のなかに自分の心が移動したことを発見する。

 男女の入れ替えの場面は、大林宣彦監督の映画「転校生」(1982年)に対する、このドラマの脚本を手がけている、森下佳子のオマージュ(敬意)であることがうかがえる。とすると、タイトルの「天国と地獄」は、黒澤明監督の同名の傑作(1963年)からきているのだろうか。

 「サイコな2人」は、刑事・望月役の綾瀬はるかのナレーションによって進行する。体と心が、望月と日高の男女で入れ替わったことは、周囲に知られないように言葉遣いに気を遣っている。ふたりが直接話すときは、男女の声ながらも話口調はそれぞれ本来のものだ。綾瀬はるかと高橋一生の演技力が楽しめる。

 日高に入れ替わってしまった、望月は相棒の刑事・八巻英雄(やまき・ひでお、溝端淳平)に気づかれ、ふたりは日高の謎を追いかけることになる。一方、望月になってしまった、日高は、望月の同棲相手の便利屋・渡辺陸(わたなべ・りく)と暮らし始める。望月は、陸に事態を打ち明けて、協力を取り付ける。

 望月・八巻のコンビに便利屋の陸が加わったチームとは別に、望月の先輩刑事である、河原三雄(北村一輝)が連続殺人事件を追っている。

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