田部康喜のTV読本

2021年1月29日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(eakrin rasadonyindee/gettyimages)

 「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(日本テレビ・毎週水曜よる10時)は、菅野美穂と浜辺美波の母子が、新たな恋に生きるコメディである。セーラー服の高校生役で数々の映像作品によって、女優の階段を上ってきた、浜辺美波は進化をみせる。アニメおたくの女子大生役は、少女役から脱皮しようとしている演技が楽しめる。

 小説家の水無瀬碧(44歳・みなせあおい、菅野美穂)は、シングルマザーで一人娘の空(20歳・浜辺美波)を育ててきた。文壇に20歳代初めにデビューして、「恋愛小説の女王」と呼ばれた碧もミステリーに挑戦して新味を出そうとしたものの、文芸誌の連載を打ち切りになって壁にぶつかっている。娘の空は一時、美術大学から画家を目指そうとしたこともあったが、自分の力に自信が持てずに断念し、ケインズを学ぶゼミに所属する、地味な学生生活を送っている。

 空にはもうひとつの顔がある。コミックマーケットに漫画の主人公の扮装をして参加するほどのおたくである。現実の恋愛経験はない。空をめぐる恋模様は、ゼミの同級生の入野光(岡田健史)と、公園ででくわした、整体師の渉啓介(東啓介)である。

 浜辺美波は、映画「君の膵臓を食べたい」(キミスイ、月川翔監督・2017年)によってスターダムにのし上がった。難病に苦しむ女子高生の山内桜良役は代表作である。相手役の志賀春樹役の北村匠海とともに青春映画の傑作の系譜に残るだろう。浜辺と北村を主役に配しながら、今度はすれ違いの恋を描いた「思い、思われ、ふり、ふられ」(三木考浩監督・2020年)でも、女子高生役の浜辺美波は可憐な花である。

 今回のドラマで、浜辺美波はセーラー服から、大人の女性に羽化しようとしている。公園で出会った、整体師の渉(東啓介)とたまたまカフェで一緒になる。彼が読んでいた文庫本の小説が、母の碧(菅野美穂)の作品だったことに驚く空だった。アニメおたくの彼女は、その驚きを、ポケモンの驚いた声にまねたという「コツメカワウソ!」を連発する。

空(浜辺) コツメカワウソって、どんな動物か知らないんですけどね。

渉(東)  上野動物園にコツメカワウソが飼われるようになったって聞いたけど。二人で見に行かない?

 「これは大変だ。初デートだ」と緊張した、空は母の碧に助けを求める。「ここは、恋愛の女王のかあちゃんにお願いしなきゃ」と。

 碧は、パソコンに向かって、「男を落とす方法」をあっという間に63項目も打ち出して、空の指導を始める。

碧 1杯で酔ったふりをする。手袋を片方なくしたふりをして、男のポケットに手をつっこむ。‥‥イタリアンの締めには、ティラミスとイチゴを頼む。

空 かあちゃん、いつの時代だよ。ティラミスって。

 碧(菅野)と空(浜辺)の掛け合いは、ギャクの応酬で楽しめる。このドラマのひとつの魅力である。

空 広瀬すず、だったら、ただ、立ったままでいいのになぁ。

碧 井川遥、だったら、ただ、すわったままでいいのになぁ。

関連記事

新着記事

»もっと見る