田部康喜のTV読本

2020年8月29日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Hiro_photo_H / gettyimages)

 「私たちはどうかしている」(日本テレビ・水曜よる10時)は、映画「君の膵臓をたべたい」(キミスイ・月川翔監督、2017年)の女子高校生・山内桜良役で観客の涙を誘った、浜辺美波が母の殺人事件の”冤罪”を晴らそうとする、ミステリーである。舞台は、母子で住み込んでいた金沢屈指の和菓子店「光月庵」である。

 事件は15年前に起きた。菓子職人だった七桜(なお・浜辺美波)の母・大倉百合子(中村ゆり)は、若主人の高月樹(鈴木伸之)殺しで逮捕され、獄中で死ぬ。百合子が七桜に残した手紙には「私はなにもやっていない」とあった。

 血まみれになって倒れていた、樹(鈴木)を発見したのは、長男の椿(横浜流星)だった。「誰が殺したのか」と警察に尋ねられた樹が、父の血がついた指先を向けたのは七桜の母・百合子だった。

 映画・ドラマ界の10代の女優のなかで、浜辺美波が抜群の美貌であることは異論がないだろう。浜辺の演技力は、シリアスな面をみせながら、コメディアンヌの表情をみせるところにある。

 「キミスイ」の膵臓病で余命いくばくかもない女子高校生は、「仲良し君」と呼ぶ同級生の志賀春樹(北村匠海)と触れ合うことによって、生きる意味を見出していく。いつも明るく笑っている表情から一瞬、死の恐怖の言葉が漏れる。

 今回のドラマは、老舗菓子店の絡み合う人間関係のなかで展開する、シリアスなミステリーである。浜辺は生来のコメディアンヌの演技を封印して、女優としてもうひとつ脱皮できるかどうかの大切な作品である。

 殺人事件によって、和菓子店「光月庵」を追い出された、七桜は母と同じ菓子職人の道を歩んでいた。ごひいきの客である、茶道の宗家の娘・真由から結婚式の引き出物の菓子づくりを頼まれる。老舗の「月光庵」と七桜にそれぞれ菓子を作らせて、親類縁者も集めて、どちらかに決めることになった。

 菓子対決の場に現れたのは、「光月庵」の若主人である、椿(横浜流星)だった。椿と七桜は、ふたりで仲良く菓子作りの遊びをした。母・百合子(中村ゆり)を”冤罪”に陥れた張本人としては、許しがたい敵だった。

 老舗の「光月庵」にこだわる親族たちによって、味では高い評価を得た七桜も勝負には負けた。帰り道で、待ち伏せしていた椿は、七桜に向かってとんでもない提案する。

 「俺と結婚しない?」「本気なら3日後に光月庵に来るように」

 七桜が「光月庵」を訪れると、椿(横浜流星)と許嫁の長谷栞(岸井ゆきの)の結婚式がまさに執り行われている真っ最中だった。

 「まさか来てくれるとは思っていなかった」と、七桜に話しかけた椿は、式場の参列者に「私はこの人と結婚します」といって、七桜に口づけをするのだった。式はぶち壊しとなり、七桜は「光月庵」に住むことになる。

 原作の同名漫画をハイテンポな脚本に仕上げているのは、衛藤凛。映画「のだめカンタービレ 最終章」(前編2009年、後編2010年)の大ヒットで知られる。

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