2024年11月22日(金)

2024年米大統領選挙への道

2022年5月10日

Q3 なぜバイデン大統領は5月2日(現地時間)南部アラバマ州にあるロッキード・マーチン社のジャベリン生産工場を視察する必要があったのか?

 A3 バイデン大統領がジャベリンに特別な思いを抱いていることは以前コラムで紹介した(「バイデン大統領の『ワルシャワ演説』の真意』参照)。加えて、バイデン氏はジャベリンの在庫不足に対する米国民の不安を払拭する必要があった。サキ報道官によれば、視察した工場では過去20年間で5万基のジャベリンを生産してきた。バイデン氏はロッキード・マーチン社の経営幹部や従業員に向かって、「あなたが人々の人生を変えている」と演説を行い、拍手喝采を浴びた。

 彼らの士気を高めたのだ。そして、演説の中でウクライナと周辺国への武器供与を行うために330億ドル(約4兆2760億円)の追加予算の早期成立を米議会に求めた。ジャベリン生産工場から米議会に圧力をかけたのだ。ちなみに、ウクライナ支援の残額は2億5000万ドル(約324億円)である。追加予算の承認が急務なのだ。

Q4 バイデン政権は米軍需産業を潤わせるためにロシアとウクライナの戦いの長期化を狙っているのか?

 A4 仮にロシアとウクライナの戦争が長期化し、ガソリン価格や食料品価格の高騰が継続すれば、中間選挙および24年大統領選挙で、バイデン大統領ないし民主党候補にかなり不利に働くことは確かだ。つまり、戦争の長期化は選挙にマイナス要因になる。加えて、長期化により米国の軍需産業が利益を上げても、ジャベリンやスティンガーを生産するレイセオン社とロッキード・マーチン社が共和党候補よりも民主党候補により多くの政治献金をする保証はない。

 政治献金の調査を実施しているNPO(非営利団体)「オープン・シークレッツ」によれば、レイセオン社の連邦議員選挙における党派別の献金率(19~20年)は民主党48.25%、共和党51.49%であった。共和党が民主党を3.24ポイント上回った。一方、ロッキード・マーチン社の献金率(20年)は民主党47.21%、共和党52.79%であった。こちらも共和党が民主党を5.58ポイントリードした。

 12年からロッキード・マーチン社は民主党よりも共和党に多額の政治献金を行ってきた。22年は現時点(日本時間5月9日午前5時30分)で民主党49.40%、共和党50.60%になっている。今秋の中間選挙と24年大統領選挙で、米軍需産業からの政治献金において民主党候補が共和党候補に対して有利に立てるとは言えない。従って、バイデン政権が米国の軍需産業を潤わせるために戦争の長期化を狙っているとは言い切れないのではないだろうか。


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