2024年7月16日(火)

家庭医の日常

2022年5月25日

 検査についての細かい条件はあるが、基本的にCKDは次の①、②のいずれか、または両方が3カ月以上持続すれば診断される。

① 尿蛋白/クレアチニン(Cr)比 0.15 g/g 以上
② 血清クレアチニン値による推算糸球体濾過量(eGFR) 60mL/min/1.73m2 未満

 血液に含まれる老廃物は腎臓の糸球体で濾過されて、尿として体外へ排出される。そのため、血液中および尿中の老廃物の量に着目すると、腎臓の機能を知ることができる。クレアチニン(Cr)は、筋肉へのエネルギーの供給に際し出てくる老廃物である。

 eGFRはさまざまな推算式で求められるが、日本では日本人に合わせた次の式が用いられる(-1.094は血清Crの指数、-0.287は年齢の指数)。

eGFR(mL/分/1.73m2)=194×血清Cr (mg/dL)^-1.094×年齢(歳)^-0.287
(女性の場合には×0.739)

 実は、CKDは「人為的に作られた疾患」である。02年、エビデンスに基づく腎臓病の診療ガイドラインの開発・導入を目指す国際組織 Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO)が、世界的に増加する透析患者数を抑制する目的で、専門外の人にも理解しやすいように、国際的に新しい疾患CKDを提唱し、その診断基準を設定したのである。

 CKDは原疾患(糖尿病があるかないか)、GFR(6区分)、尿蛋白(3区分)を組み合わせた重症度分類をする。その重症度分類のステージは、死亡、末期腎不全、心血管疾患を発症するリスクで緑、黄、オレンジ、赤に色分けされており、この順にステージが上昇するほどリスクが上昇することが視覚的に理解しやすくなっている(日本腎臓学会編『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018』p.3)。

CKDのマネジメント

 R.H.さんは糖尿病や心血管疾患にかかったことはなく、2年前の重症度分類は、GFR区分ではG3a(軽度〜中等度低下)、蛋白尿区分ではA1(正常)で、これらを組み合わせると重症度は黄色だった。国内外の診療ガイドラインを参照しても、彼が40歳以上という年齢を加味して、生活習慣の改善を進めながら家庭医が診療を継続できる区分である。

 私はR.H.さんの意向を確認しつつその後のマネジメントについて相談し、生活習慣改善のポイントを一緒に調べてその内容を納得してもらい、降圧薬については、今までのカルシウム拮抗薬に加えて、腎臓や血管を保護するアンジオテンシン変換酵素阻害薬を処方した。さらに心血管系イベントを予防するためにスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)を処方した。幸い、追加した薬剤による副作用は認められなかった。

 R.H.さんとも相談して、CKDの受診間隔は、ガイドラインの推奨である1年ごととした。今まで降圧薬については、3カ月ごとに処方してその都度クリニックを受診してもらったが、今年4月からはリフィル処方箋が出せるようになるので、CKDと合わせて年1回の受診も可能になるだろう。

CKDのセルフケア情報が乏しい日本

 CKDでは、日常の生活でのセルフケアがとても大事である。だが、ここで問題がある。2021年8月の『患者に「がん検診を受けたい」と言われたら?』でも書いたように、日本では、インターネットを使って一般の人にとってわかりやすく質の高い医療情報を探すことに大変苦労する。


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