第2次安倍内閣が発足して約3カ月。岸田文雄外相は3月24日のNHK番組で「中国との対話のドアはオープンだ。新指導部ともしっかり意思疎通を図っていきたい」と述べ、5月に韓国で開催予定の日中韓3カ国首脳会談の機会を利用して、安倍首相と中国新指導部の初の日中首脳会談を実施したい考えを示した。
しかし、尖閣国有化をめぐる対立を解消する妥協点は見つかっておらず、日中首脳が会っても、中国側が監視船の領海侵入をやめる保証はない。それでも会うのか、日本の外務省は難しい選択を迫られることになろう。
「鉄の女」でますます強まる中国脅威論
中国指導部は近年、国際社会の中国脅威論を払拭しようと躍起だが、そうした意図とは反対に脅威論は強まる一方だ。
全人代で可決された2013年度の予算案には、前年度実績比10.7%増の国防費が計上され、3年連続2桁増となった。これは日本の防衛関係費の約2.3倍に上る。国防費には、軍事転用が可能な宇宙開発費や、現在進行中の国産空母開発の費用は含まれず、実際の軍事費は公表額の1.5~3倍とみられている。中国が軍事費の透明化を進めない限り、国際社会の懸念はぬぐえない。
全人代の報道官に初めて女性外交官を起用したのも、ソフトムードを演出する狙いだったとみられるが、女性の強硬発言の方が「鉄の女」として、男性より目立つ。美女の誉れ高い中国外務省の華春瑩副報道局長の発言もまたそうだ。小手先の演出だけで、脅威論をぬぐうのは難しい。
「平和的発展」を実際の行動で
李克強首相は就任後初の記者会見で、わざわざ「最後に一言いわせてほしい」として「たとえ中国が発展、強大化しても、覇をとなえることはない。なぜなら、中国は近現代の歴史において、悲惨な目に遭い、『自らされたくないことを人にはしない』という思いを深く胸に刻んだ。これは中国人の信条だ」と述べた。
西欧列強や日本に領土を蚕食された歴史を念頭に、中国の覇権主義を否定。李首相はまた「平和発展の道を行くことは、中国の固く移ろわない決意であり、国家の主権と領土の保全を守ることもまた中国の揺らぐことのない意志だ」と強調した。
硬軟のバランスをとった点は、習氏の閉幕演説と共通しており、中国脅威論を払拭したい指導部の意向がはっきりみてとれる。しかし、新指導部が国際社会の信頼を得るためには「平和的発展」を実際の行動で示すことが不可欠だ。