2024年4月27日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年3月28日

好位置をキープした李源潮氏と汪洋氏

 胡錦濤前国家主席に近い共産主義青年団(共青団)系で、改革志向と目された李源潮氏(62)=前共産党中央組織部長=や、広東省で民主化を進めた汪洋氏(57)=前同省党委書記=は、昨年11月の共産党大会では党中枢の政治局常務委メンバー(7人)に入れなかった。

 だが、今回の全人代で、李氏は国家副主席、汪氏は副首相とそれぞれナンバー2のポストを確保し、2017年の党大会で常務委入りを狙える好位置をキープした。

 丹羽宇一郎前大使は昨年12月の退任直後に日本記者クラブで行った講演で、日中関係の悪化によって中国指導者が日本の外交官との面会を拒んでいる中、「次期最高指導部に入ることが確実な人物」に会って離任あいさつをしたエピソードを紹介した。

 先方の要請にそって、大使車の日の丸もはずした密かな訪問。X氏は「対日関係を非常に重視している」と話したという。丹羽氏の口ぶりからは、開明的なX氏への期待がうかがえた。実名を明かさなかったが、相手は李源潮氏だった可能性が大きい。

絶対権力を否定した温家宝氏

 全人代の冒頭、温家宝首相は引退前の最後の政府活動報告で「人民が法に基づき、広い権利と自由を享受できるよう保障すべきだ」と述べ、社会主義体制下の民主主義と法治の重要性を訴えた。

 改革志向だった温氏は在任中、政治体制改革を推進すべきだと重ねて主張してきたが、保守傾向を強める指導部の中で、完全に孤立した。だが、最後の報告でも「政治体制改革」や「人権」など刺激的な文言を避けながら持論を展開。

 法治や世論による権力監視の重要性を強調し「人民に権力を監督させ、権力は陽光の下で行使されなければならない」と共産党の絶対的な権力を否定した。

遠い政治体制改革

 今回の会期中、引退した呉邦国・全人代常務委員長(国会議長)と、新指導部のメンバーで国政助言機関、人民政治協商会議(政協)主席に選出された兪正声氏=共産党序列4位=は相次いで「西側の政治制度モデルを決してまねしない」と強調した。


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