しかし、経済財政諮問会議の地盤沈下とそれが打ち出す骨太の方針の〝骨細化〟の流れは、安倍晋三元首相が政権を奪い返しても、変わらなかった。
省庁の予算獲得の場へ
第二次安倍政権では、権勢を振るった官邸官僚の出身母体である経済産業省が本来諮問会議の役目である成長戦略などを取り仕切るなど、実質的に政策決定に介入したからである。また、安倍元首相や元首相を支えた菅義偉官房長官(当時、後に首相)も、第一次政権での失敗に懲りあえて経済財政諮問会議を活用しなかった節もある。
そうした経緯により、経済財政諮問会議と骨太の方針の役割や重要性は大きく変質し、経済財政諮問会議が関与しながら官邸主導で作成された骨太の方針は、今や各省庁が自分たちの重点施策を持ち寄る場に堕し、総花的になってしまった。なぜなら、骨太の方針に記載されるということは、取りも直さず、各省レベルの重点施策から内閣の重点施策に昇格することを意味し、それは予算獲得に絶大な効力を発揮するから、小粒であろうが何だろうが、どんどん骨太の方針に盛り込もうとするのである。
だから、骨太の方針が意識される時期になると各省庁はメディアを使ってアドバルーンを上げたりするし、最近でも防衛費増額を目指す安倍元首相が陰に陽に影響力を行使して、防衛費に関する記述を盛り込ませたのは記憶に新しいことだろう。
したがって、本来は、首相のリーダーシップのもと、経済財政諮問会議やその事務局を司り、首相を補佐し、省庁横断的な課題について総合調整を行うことができる内閣府が政策の目玉を考え、各省庁の政策の取捨選択を行う必要があるのだが、それが機能していない。
未曾有の時代だからこその「選択」が肝要
こうしたことを念頭に「骨太の方針2022」を見直すと、なぜどれもこれも既視感漂う施策が総花的に並んでいるかが理解できるだろう。
したがって、もし岸田首相が自ら掲げる「新しい資本主義」を本気で実現したいのであれば、骨太の方針に盛り込む事項は各省庁の官僚任せにはせず、自分の経済ブレインを経済財政諮問会議民間議員に任命し、さまざまな会議体から上がってくる答申などに関して諮問会議の場で議論を尽くした上で、最終的には首相のリーダーシップのもと、諮問会議民間議員らの協力を得て、総理自らが掲げる「新しい資本主義」実現のために最適な骨太の方針を策定いくことが肝要である。
未曾有のコロナ禍を乗り切り、日本の中長期的な課題を解決していくためには、骨太の方針を今一度総理のリーダーシップを支えるに足るだけの骨太なものに鍛え上げ直さなければならない。