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2022年2月21日

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滝田洋一 (たきた・よういち)

日本経済新聞社編集委員・テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』解説キャスター

1981年慶應義塾大学大学院修了。金融部、チューリヒ支局、米州総局編集委員などを経て、2011年より現職。08年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。近著に『コロナクライシス』(日経プレミアシリーズ)。

 多くの企業が目標としてきた東京証券取引所への上場。その東証の上場の仕組みが2022年4月4日からガラリと変わる。株式市場としての国際競争力を高めるための大改革だが、果たして企業は新しい上場維持基準に適応できるのか。

 プライム、スタンダード、グロース。新しい東証はこの3つの市場に衣替えされる。この市場改革で注目を集めたのは、いま東証1部に上場している企業の行き先だった。投資家や経営者が固唾をのんで見守った、東証による1月11日の発表はこうだ。

 東証1部上場企業は2185社。そのうち1841社がプライム市場を、344社がスタンダード市場を選択した。東証が世界経済をリードする企業向けと位置付け、実質最上位と受け止められたプライム。その市場を東証1部企業の84.3%が選んだ。

 一方で、国内経済の中核と位置付けられるスタンダード市場を選んだのは15.7%。新たにプライム市場を創設しても、東証1部と代わり映えしない。そんな指摘が聞かれるが、本当にそうか。問題は1部上場でありながらプライム市場への移行の条件を満たしていない617社の選択だ。

 このうち、スタンダード市場への移行を選んだのは52%の321社。プライム市場を選択したのは48%の296社だった。企業としてはやはりプライム市場への未練は断ちがたいのだろうが、スタンダード市場を選択した企業にはそれなりの味がある。

東証再編で3つの新たな市場が誕生する
(出所)各種資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 焼き肉のタレでおなじみのエバラ食品工業(以下、エバラ)。スタンダード市場を選んだ理由は2つ。①上場基準と②研究開発への資金確保だ。

 まず、①上場基準はエバラの株主構成に関連する。つまり、プライム市場の上場基準では1日の株式平均売買代金2000万円以上を求められる。ところが、同社の株は長期保有を希望する個人投資家が多い。プライム市場に上場すれば将来的に売買代金基準を維持できず、上場廃止となるリスクがある、というわけだ。

 次の②研究開発の資金確保は、情報開示コストと絡む。エバラの場合、プライム市場に上場するには、情報開示などのためのコストが、スタンダード市場より2000万円多くかかる。そうしたコストを抑え、商品開発などに資金を投入していく道を選択したという。背伸びしない堅実な判断といえる。

 高知銀行、島根銀行、長野銀行などの地方銀行、井筒屋、秀英予備校、北野建設といった地方企業も、スタンダード市場を選択した。特定の大株主を持ち、流通株の少ない企業も同市場を選んだ。日本オラクル、アコム、丸紅建材リース、兼松サステックなどだ。

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