TOPIX見直しで動く企業
経済の活性化なるか?
今回の東証改革は上場企業のふるい分けと並び、もうひとつの仕掛けを伴っている。東証株価指数(TOPIX)のモデルチェンジだ。現在のTOPIXは東証1部上場企業2185社がすべて組み込まれており、その中には、成長期を過ぎ、時価総額が低迷しているところも少なくない。
その証拠に株式の時価総額が企業の清算価値を下回る、株価純資産倍率(PBR)が1倍割れの銘柄は、TOPIX全体の49%にのぼる(22年1月7日時点)。対する米国ではPBR1倍割れの比率は、ニューヨーク証券取引所では11.8%、ナスダックでは10.8%にすぎない(21年末時点)。
しかも米国株の代表的指標であるS&P500には、よりすぐりの500社が選ばれている。東証1部上場の2185社を自動的に組み入れているTOPIXは、魅力の点で勝負にならない。そこで流通株式時価総額が100億円に満たない企業については、TOPIXへの組み入れ比率を段階的に減らしていくことになった。
この見直しは投資家への魅力向上を狙ったものだが、株価が振るわず、時価総額が小さな企業の痛いところを突くことにもなった。というのも、TOPIXに連動した運用成績を目指す投資信託などが、株価不振企業の株式を売却することにつながるからだ。
TOPIXへの組み入れ比率の維持を狙っているからだろう。このところ業績の上方修正や増配に動く企業が相次いでいる。ソフトウェア・システムを提供する日本システム技術は22年3月期の配当計画を従来の30円から40円に変更した。21年3月期の28円から12円の大幅増配である。
射出成形機を製造・販売する東洋機械金属も22年3月期の配当を従来の15円から25円へ。前期の5円から5倍に増やす。情報サービスを提供するクロスキャットは同配当を前期並みの22円から30円へと増配する。「カネは天下の回りもの」ともいう。企業が積極的に株主への利益還元に動くことは、経済の活性化にもつながるはずである。
もちろん、東証改革やTOPIX見直しにもまして重要な課題がある。日本企業全体が投資対象としての魅力を高めることだ。ホンダ、武田薬品工業、日本郵政、日産自動車、日本製鉄、東レ……。日本を代表するこれらの企業には共通点がある。1月末のPBRが1倍を割っている点だ。
岸田文雄首相は「新しい資本主義」を掲げ、成長と分配の好循環を目指すが、現状では代表的な企業が株式市場から高い評価を受けているとはいえない。ヒト、モノ、カネを動かす主役の企業に元気がないようでは、経済全体に活気がつかず、カネもうまく回らない。東証改革と歩調を合わせ、本物の成長戦略を打ち出すときである。
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