2024年12月22日(日)

#財政危機と闘います

2022年6月9日

 先日、岸田文雄内閣として初となる「経済財政運営と改革の基本方針2022」いわゆる「骨太の方針2022」が閣議決定された。岸田首相は「参院選後、決定した方針を前に進めるための方策を具体化し、経済社会の構造変化を日本がリードしていく」と述べるなど、随分と気合いが入っているようだ。

岸田首相は骨太の方針に気合が入っているが、その中身は(つのだよしお/アフロ)

 そもそも骨太の方針とはなんだろうか。「経済財政運営と改革の基本方針」の略称であり、時の内閣の重要政策課題や次年度予算編成の方向性を示す。経済財政政策に関する重要事項について、有識者はじめ優れた識見や知識を活用しつつ、内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮することを目的として中央省庁等改革を機に内閣府に設置され、首相が議長を務める経済財政諮問会議の場で、毎年6月上旬ごろに策定される。

骨が細くなった「骨太の方針」

 筆者は、中央省庁再編直後の内閣府在職時、小泉純一郎内閣での「骨太の方針2001」の策定に、雑用係として末席ながら携わった経験がある。当時の骨太の方針と比べてもかなり総花的になっており、岸田首相の気合の入りようとは裏腹に、「骨太の方針」も随分と骨が細くなったと感じている。筆者同様、言葉は悪いが骨粗鬆症気味に感じた読者も多いことだろう。

 「骨太の方針2022」では、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」を実現するための重点投資分野として、1.人への投資と分配、2.科学技術・イノベーションへの投資、3.スタートアップ(新規創業)への投資、4.グリーントランスフォーメーション(GX)への投資、5.デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資を列挙している。

 しかし、例えば、人的資本投資で個人の能力を底上げするため「リカレント教育を推進する環境を整備」と言っても、リカレント教育の概念自体は1969年に提唱され日本でも古くから導入されているためすでに環境は整備されている。問題は私たちも企業もリカレント教育を行うインセンティブがないという点である。なぜなら、企業も私たちも、従来の終身雇用と年功序列型賃金体系のもとで、その企業に特化した技能をOJTなどで習得しているのであり、リカレント教育のような一般的技能が、そうした慣行のなかでどのように役立つのか、国は具体像を示すのが先決である。

 また「兼業・副業の推進」に関しても、企業による賃上げがなかなか実現しない中、苦肉の策として提案されたが、そもそも企業が従業員に副業を促すことは、結局自らの従業員の賃金確保やスキルアップの責任を放棄しているとしか感じられない。


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