2022年9月26日(月)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年7月2日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 第3は、こうした日本文化への「憧れ」いや「渇望」を持っている層というのは、政治的には中道からリベラルだという点である。従って、トランプ主義などの悪影響を受けた「アジア系へのヘイト」感情を持った層というのは、心配無用どころか「絶無」であると考えていいだろう。

 またコロナ禍への対策ということでも、保守州の多数派のように「マスクを嫌悪」するなど、「対策を規制と思って反発する」ような人は、これもまずゼロであると考えられる。日本の銃規制は米国ではよく知られているので、銃の携行権などを主張する人は来ないだろうし、反対に訪日を考える人は日本の治安の良さを評価して旅行先に選ぶ場合が圧倒的と思われる。

 従って、国境を開くことによって、この間の米国における、治安の悪化や感染対策への不服従といった、米国の「問題を抱えた部分」が流入するという心配は、全くの見当違いであるばかりか、実際に来るのはその正反対であると考えたほうがいい。

 但し、そうは言っても米国人であるので、さすがに「黙食」とか「斜め座り」「アクリル板」「マスク会食」といった習慣を理解させるのは難しい。飲食店入口の検温や消毒、ビュッフェの手袋などであれば、説明すれば納得してもらえると思う。だが、通常は食事イコール家族や仲間とのコミュニケーションというのが「ライフスタイル」として深く定着している中で、それでも強めの対策に協力してもらいたいのであれば、相当の工夫は覚悟しなくてはならないだろう。

そうした米国人がしたい3つのこと

 では、そのような「今後の訪日外国人」は、日本で何をしたいと考えているのだろうか?

 第1は、何と言っても食事への期待がある。勿論、彼らも日本のデフレ経済のことは知っており、また超円安だという計算はしてやって来るであろう。だが、彼らの金銭感覚からすれば、「本当に美味しい、本物の日本食」が楽しめるのであれば、相当なカネを出しても惜しくないと考えているのは間違いない。

 そこで問題になるのが、それでも彼らの多くは「本当の日本の食文化」は知らずに、一方的に憧れているだけということだ。何らかの丁寧な説明、とりわけ英語による分かりやすい情報は必要としている。

 日本好きはリベラルな高学歴ということから、一定の比率でベジタリアンなども含まれており、メニューを前に戸惑う場合も多いだろう。コロナ禍前とは異なる、より深化したインバウンド需要に対応するには、英語での料理の説明、そして食材の表示など、しっかり工夫して臨みたい。

 第2は、意外な目的地ということだ。この間、日本が鎖国していたことから、コロナ禍以前に訪日した経験のある層が、再訪したくてもできなかったわけで、そうなると再オープン後には「リピーター」が殺到することは間違いない。

 彼らは、東京や京都、大阪、あるいは富士山といった目的地はよく知っており、そうではない場所、つまり「これまではインバウンドに発見されていなかった」目的地を狙いたがる。コロナ禍前にもそうした傾向はあったが、それが加速することが予想される。

 そうした場合に、宿泊施設や飲食店、交通機関などが外国人観光客に慣れていないとか、地域社会に理解がないような目的地にも、外国人が殺到するということは十分に考えられる。英語での案内からキャッシュレス対応まで、機動力ある対応が必要になってくる。

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