2022年12月6日(火)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年7月2日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 ようやく海外からの観光客の再受け入れが開始された。ただ、現在は、主要7カ国(G7)など主要国からの日本入国でもビザが必要であり、各国にある日本の在外公館の窓口は、予約制を取ってはいるものの、ビザを申請する人で混雑している。また、入国前72時間までのPCR検査と検疫アプリなど、一時帰国する日本人でも戸惑うような運用も続いている。

外国人観光客受け入れは再開され、米国の日本需要が爆発しようとしている(AP/アフロ)

 けれども、今後、ビザなし渡航の再開や入国前検査の廃止がされると、訪日外国人は一気に拡大するであろう。コロナ禍前に年間4000万人に近づいていた勢いは、更に拡大してゆくことが見込まれる。日本では全く知られていないが、米国ではコロナ禍の2年半の間も、日本のカルチャーに関する人気は拡大の一途を辿っており、インバウンド観光への潜在ニーズは膨張を続けているからだ。

高まる購買力と日本への好奇心

 例えば米国の場合、「日本に行きたい人」はどんな属性を持っていると考えられるだろうか?

 第1の特徴は、コロナ禍前と比較すると、更にパワーアップした購買力である。日本に行きたいと考える層は、教育水準が高く、従ってエンジニアリング、ファイナンス、コンピューターソフトなど知的労働に従事している人が多い。彼らの初任給は、年間12万ドルぐらいで、30歳では年収20万ドルラインを超えている場合も多い。

 更に、コロナ禍の間はせいぜいが「巣ごもり消費」で高級食材に手を出したりしていたぐらいであり、手元資金を溜め込んでいる。また国内旅行に行きたくても、航空業界の混乱等で簡単には行けない。そこで、仮に門戸が100%開いて、日本へ旅行という場合には、通常年よりも大きめの予算を用意していることが考えられる。

 そこへ現在のトレンドに変化がなければ、超円安が加わることになるわけで、その購買力は、想像を超えるものがある。米国の国内旅行の相場から考えると、1人1泊200ドル(2万6000円)、1食50ドル(6500円)が下限であり、滞在中に特に予算を用意する特別なディナー、観光地での宿泊などにはその倍以上を考えていると言ってもいいだろう。

 念のために申し上げるが、この数字は中間層のボリュームゾーンの金額である。富裕層の場合は、もっと大きくなる。

 第2の点は、日本への好奇心や愛着は、コロナ禍前より更に膨張している。「鬼滅の刃」が描いた大正時代へのノスタルジー、「こんまり方式の片付け」が訴えるシンプルな(しかし高級な)ライフスタイルがまず指摘できる。そしてもはや渇望と言ってもいい「本場で本物のラーメンが食べられるなら、20ドルでも30ドルでも、いやそれ以上出してもいい」といった「オリジナルの」食文化への憧れがある。

 食文化ということでは、これも日本では信じられないかもしれないが、ラーメン人気に加えて、ゆず風味、本物の焼き鳥などが、猛烈な好奇心の対象となっている。更には日本スタイルの洋食、例えばオムライスやカレーライスなど、以前にはインバウンド向けではないと思われていた食文化まで、ジワジワと浸透が始まっている。

 更に、シティポップと呼ばれる80年代の邦楽への信じられないような愛着があり、その一方で、ゲーム、アニメ、漫画への「のめり込み」も深化している。ファッション、デザイン、そして現代建築なども、日本ならではのテイストが、これも信じられないレベルで評価されつつある。

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