2024年11月22日(金)

安保激変

2013年4月9日

弱みにつけこまれてきた中国

 北朝鮮は中国に対しても「弱者の恫喝」を行っている。中国が北朝鮮に対する制裁に常に消極的なのは、北朝鮮の崩壊を恐れているからだ。北朝鮮が崩壊すれば大量の難民が中国になだれ込み、中国国内はさらに不安定化する。中国には北朝鮮をアメリカとの「緩衝地帯」として維持しておきたい思惑もある。北朝鮮は中国のその弱さにつけこみ、支援を得てきたのだ。

 また、2003年以降、中国は六者協議の議長国として北朝鮮に核開発を放棄させる重要な役割を担い、関係諸国もまた中国の影響力に期待してきた。だが、仮に中国が北朝鮮に核放棄を強く迫れば、北朝鮮は見返りに中国による核の傘の提供を求めるだろう。けれども、中国には核の傘を提供するだけの核戦力はない。ここでも、北朝鮮は中国の弱さにつけこみ、中国が主導する六者協議を通じて各国から援助を引き出す一方、核開発を秘密裏に続けてきた。

 中国が持つ北朝鮮への影響力を過大評価した六者協議という枠組は失敗だった、と結論づけざるを得ない。

体制維持手段としての「核の恫喝」
日米は「屈しない」という明確なメッセージを

 北朝鮮による「弱者の恫喝」は今や「核の恫喝」ともなった。しかし、北朝鮮による核の恫喝はあくまで体制維持の手段だと考えるべきだ。そうであれば、北朝鮮に核の先制攻撃をする意図はまずないと考えていい。アメリカの核の報復によって自らが確実に滅亡するからだ。

 だが、米朝の間で意思疎通をする手段が皆無に近いため、誤解や誤認によって事態が急速にエスカレートする可能性は否定できない。アメリカが核攻撃も可能な戦略爆撃機を朝鮮半島に飛来させたのは北朝鮮を牽制するためだったが、不安に駆られた北朝鮮指導部はこれを先制攻撃の前触れと誤解するかもしれない。このため、アメリカは核攻撃力の示威行動は控えるようになり、予定されていた大陸間弾道ミサイルの発射実験も延期した。それでも、アメリカは本土やグアムのミサイル防衛システムを強化し、北朝鮮の挑発に備えることは怠らない。

 北朝鮮は現在中距離ミサイル「ムスダン」の発射実験を計画しているようだが、日本もアメリカとミサイル防衛で協力しながらこの挑発に備えている。折しも、今週末からアメリカのジョン・ケリー新国務長官が訪日する。ケリー長官はアジアに関心が薄いと言われているが、圧倒的な通常戦力とミサイル防衛に裏打ちされた日米同盟は、これ以上「弱者の恫喝」に屈しないことを明確に伝える強いメッセージを出すことを期待したい。

[特集] 北朝鮮の暴走に、どう対峙すべきか?

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