2022年10月7日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年7月8日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 規制産業での雇用を増やしても、この部分でのサービスの質を低下させ、価格を上げるだけで、これらの産出物を使う産業でのコストを高めてしまう。電力業で停電が起こりそうになっていても賃金が高いのは、規制産業である面も大きい。

 すると製造業は規制産業ではなく、他の産業に高いコストを押し付けることはないから、維持発展した方が良い産業ということになる。

 なお、産業計の月の所定内労働時間は165時間、超過実労働時間数は11時間なので年間では2112時間となる。産業ごとの違いはそれほど大きなものではないので、労働時間の長短はあまり考えなくても良い。

高校卒労働者の賃金も低下していない

 次に、図2で高卒労働者の賃金を見てみる。2021年の高卒労働者の年収を見ると、産業計の年収431万円に対して製造業は482万円と高くなっている。

 なぜ高卒の賃金に注目するかと言えば、米国社会の分断が高卒と大卒の所得格差、さらに大卒の中の一部の人の極端に高い所得格差によって生まれているとされているからだ。1990年代までなら、大学に行かなくても子供を育て、郊外に美しい家を持ち、立派に生活できたのに、その後の脱工業化ですべてが変わってしまったからだと言われているからだ。しかし、日本ではそんな兆しはない。

 以上を見ると、製造業の年収が平均以上であることは間違いなく、高卒労働者にも相対的には高い賃金を支払っている。

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