2022年10月7日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年7月8日

»著者プロフィール
閉じる

原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

もっと生産性を上げられる

 ただし、製造業(他の産業にも応用できるはずだが)の生産性をもっと上げる方法はあるはずだ。ビジネススクールで教鞭をとり知ったことだが、売り上げ100億という企業でも、生産計画、生産実績、在庫管理、部材の発注管理などがうまくいっていないというのである。

 中小企業では、生産も販売管理も親方や番頭が行っていて、相互に情報共有が不十分である。こんな中で、2代目社長がまず顧客リストや製造マニュアルを作るという話をよく聞くが、それとあまり変わらないことがそれなりの規模の企業でも行われているという。製造業の場合にさらに問題になるのは、部品のサプライチェーンがサービス業よりも複雑だからだ。サービス業なら顧客と仕入先の名簿くらいでも何とかなる気がする。日本企業はまず、その努力が必要になってくる。

 さらに、生産性が上がらない一つには、企業が多すぎるからだとも言える。企業の数が大きければ生産性の低い企業も残ってしまうからだ。

 そうした中で事業承継は優遇すべきものだろうか。事業に魅力があれば、親族や幹部社員が継ぎたがる。その企業のことを一番よく知っている人々が継ぎたがらないが、社会的利益があるから残した方が良い企業とはどんな企業だろうか。筆者は、事業承継が大事だという人々に、それはどんな企業かと度々聞いているのだが明確な答えが戻ってきたことはない。

 子供にとって、親の事業を継ぐか継がないかは、自分が今している仕事との見合いで決めるはずである。今の収入と事業を継いだ時の収入とリスクとを比べて承継を考える。継がないのは、親よりも高い収入を得ているからで、日本が低成長ながら成長している証拠であり、寿ぐべきことである。

 事業が承継されず、企業数が減ることは何ら問題ではない。1960年代まで、日本にオートバイ企業は何百社もあった。それが現在4社に減った。何百社もあったら、世界展開もなかっただろう。

 そもそも、オートバイでも車でも家電でも小売でも銀行でも、世界と比べて日本は企業数が多すぎたのではないか。それが現在、減少して少数の生産性の高い企業に集中しようとしている。それを無理に押しとどめることはない。

  
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る