張之豪氏によれば、安倍氏の祖父の岸信介氏は、戦後一貫して、蒋介石総統と関係が良好で、国民党政権を支え続けた。蒋介石氏が中国共産党との戦いに敗れて、台湾に逃れた後、日本は旧軍の有志が、「白団」と呼ばれる高級軍人からなる軍事顧問団を密かに派遣し、防衛を支えた。張氏によれば、真の国民党支持者なら、安倍氏を否定できようがない。
ただ、安倍氏の追悼反対の声は、国民はもちろん、国民党でも主流ではない。台湾メディアの三立新聞網によると、朱主席は、同等の海外部主任の陳以信氏らを随員に、安倍元総理の国葬に出席する考えを明らかにした。11月の統一地方選挙を念頭に、「親米日」路線を強調して、統一派でも独立派でもない、無党派層の取り込みを図る狙いもありそうだ。
市民1500人、大手企業が弔意
台湾では一般国民の間でも、安倍氏追悼の動きが広がった。中央通信社によると、日本台湾交流協会台北事務所では、銃撃事件翌日の9日、各界から花束が続々と届いた。事務所前の屋外に高さ2メートルの大型の「伝言ボード」が置かれ、市民の多くが中国語と日本語で「台湾の永遠の良い友」などと書き込んだ。
同事務所が11日、弔問の受付を始めると、夏の陽光が照りつける中、約1500人が訪れた。「伝言ボード」は、早くも11日午前にはメッセージで一杯となり、午後にさらに1枚が増設された。中には目を真っ赤にして、泣き腫らす人もいた。
中央通信社によれば、台湾最大の鉄鋼会社、中国鋼鉄(高雄市)は10~11日、本社ビルの壁面にいっぱいに、レーザーイルミネーションで「謹んで安倍首相を追悼します」の文字を浮かび上がらせた。同社は、ベトナムで日本製鉄やJFEと合弁事業を行うなど、日本と関係が深い。「重要なパートナー国で、このような重大事件が起きた。当社も深い哀悼の気持ちを示した」と述べた。
台湾の官民挙げての追悼ぶりは、英BBC(中国語版)もいぶかるほど。「安倍氏は、なぜ台湾人に敬愛されるのか」と題する記事を掲載し、国際教養大の陳宥樺助教の「日本の政治家で、反中を語る人は非常に多いのに、『親台』は少ない」などの分析を伝えた。
安倍氏亡き後、台湾人の心をこれだけつなぎ止められる日本の政治家が何人いるだろうか。岸防衛相らの尽力に是非とも期待したい。