2023年1月30日(月)

世界の記述

2022年7月18日

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井上雄介 (いのうえ・ゆうすけ)

ジャーナリスト

早稲田大学法学部卒業。1989年、天津南開大学に留学。通信社記者を務めた後、経済メディア編集者としてシンガポール、上海、台北、広州で勤務。衆議院議員政策秘書などを経て現在に至る。

 頼氏は、次期総統の最有力候補の一人で、早くも「9割当確」と見る市民もいる。「次期政権」は、蔡政権以上に日本重視の外交スタンスを取る可能性がある。

総統、首相、閣僚らが相次ぎ弔問

 頼氏が日本で奔走する中、台湾各地で追悼の活動が一斉に始まった。台湾紙・聯合報によれば、蔡英文総統は11日、窓口機関の台湾日本交流協会台北事務所を訪れ、自ら献花した上、「台湾の永遠の良き友人」と記帳した。蔡総統は11日、政府機関と公立学校に対し、安倍氏を追悼して半旗の掲揚を命じた。

 なお、台湾で半旗の掲揚は、総統が「世界平和や人類の進歩に偉大な貢献があった」と認めた時、行われる。行政機関などに求める行政規則で、一般国民への強制力はない。

 蘇貞昌行政院長(首相)も11日、総統府秘書長の李大維氏、呉釗燮外交部長(外相)、陳時中・衛生福利相を伴って同事務所を訪問。蘇院長は「台湾が中国の圧力を受けている時、安倍氏は『台湾有事は日本の有事』と語り続けた。台湾が新型コロナウイルスで困難に直面した時、ワクチンを贈ってくれた」などと述べ、安倍氏の死を悼んだ。

 ちなみに陳時中氏は、衛生福利の中央感染症指揮センター(CECC)トップとして、新型コロナ対策の指揮を続けた「時の人」。今年11月の統一地方選挙で、民進党の台北市長候補に決まっており、首都奪還の重責を担うスター政治家だ。

 一方、最大野党の朱立倫主席も、同協会台北事務所を弔問。朱主席は「安倍元首相は、台湾の永遠の良き友。家族歴代、台湾の良い友だ」と語った。家族歴代とは、安倍氏の祖父、岸信介元首相が反共の立場から、国民党の蒋介石政権を支持していたことを指している。

国民党主席は安倍氏国葬に出席へ

 国民党は、中台統一志向で、反日的な幹部も少なくない。しかし、台北市の党本部ビルは11日午後いっぱい、安倍氏を追悼して半旗を掲げた。ネット上では「国民党もついにまともになった」、「今回だけは、国民党を支持する」とやゆする言葉が相次いだ。

 ただ、台湾メディアの民視新聞網によると、国民党本部の半旗掲揚に、極端な親中派の洪秀柱元主席が猛然と反発。「日本は、釣魚台(尖閣諸島の台湾名)や慰安婦問題で謝罪していない。抗戦8年(日中戦争)を指導した中国国民党がこのようでは、我慢ならない」と述べた。

 また、中台統一派の国民党のベテラン政治家で、テレビ・ラジオで政治番組の司会者としても知られる趙少康氏もフェイスブックで「日本は、中国侵略を謝罪しておらず、反省していない。安倍氏は退任後、靖国神社を参拝し、台湾の慰安婦に謝罪していない」と批判。「国民党が半旗を掲げるのは、自尊心と自主性に欠ける」などと書き込んだ。趙氏の書き込みには、数万件の「いいね」が寄せられた。

 中台統一派の小野党、「新党」は、国民党本部前で半旗掲揚に反発して、抗議活動を実施。「中華民国への裏切りで、国辱だ」などと叫んだ。

 台湾メディアの新頭穀(ニュートーク)よると、安倍氏追悼をめぐる国民党の内ゲバに、民進党の基隆市議会議員の張之豪氏が参戦。フェイスブックで、半旗の掲揚に反対する「中台統一派」に対し、安倍氏追悼に反発するのは、故・蒋介石総統を否定することだと指摘。「それでも国民党支持者か」とからかった。


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