2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年7月26日

 核の拡散は望ましいことではないが、ケネス・ウォルツの言う様に、核保有の拡大が安定に繋がるという側面があることも理論的には否定できない。非核保有国の立場からは、五核保有国が義務と必要な役割を果たさない限り、それはあながち全くおかしいともいえないだろう。ナイは、「脆弱性の谷間」の問題を指摘するが、それは五核保有国の論理のようにも響く。

必要な非核保有国からの主張

 五核保有国の責任やウクライナでのロシアの核恫喝等については、本年8月のNPT再検討会議や来年の主要7カ国(G7)等で現実主義に立って十分議論されるべきだろう。ウクライナ戦争でのロシアの核恫喝は、今後アジア太平洋等での核恫喝の敷居を下げたのではないかと強く懸念する。

 効果的な核不拡散を確保するためには、NPT体制の再検討や五核保有国の一層真剣な軍縮への態度が不可欠ではないだろうか。22年1月3日、米露中仏英の五核保有国が核戦争・核拡散を防ぐための共同声明を発表したことは一定の意義があった。書いてあることは全て正しい。

 しかし、その約1カ月後にプーチンは平然とウクライナに侵攻し、核恫喝迄している。核不拡散問題は、核保有国の立場からだけでなく、もっと非核保有国の立場からも考える必要がある。ウクライナ戦争の教訓とは、非核保有国の不安をもっと理解し、核保有国がその責任を果たし、行動せねばならないことにあるのではないだろうか。

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