円滑な軍事研究を可能にする
セキュリティ・クリアランス
軍からの委託研究を進める際には、軍事機密の扱いが問題となる。しかも、米国の総合大学の多くは私立であり、独立した民間の機関である。とりわけアイビーリーグ(東海岸の有名私立大学)の8校にスタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)を加えたトップ10校、そしてさらにそれ以上の評価のあるカルテック(カリフォルニア工科大学)を含めた11校はすべて私立大学だ。民間へ軍事研究の委託がされるのだから、管理が緩ければ重要な軍事機密が漏洩する。反対に、管理が厳し過ぎれば民間ベースでの研究を阻害しかねない。
そこで重要になってくるのが「セキュリティ・クリアランス」という制度である。これは機密情報を取り扱う適格性の審査を行う国の制度であり、米国の各大学ではこの制度を運用することで、軍民の協力をスムーズにしている。セキュリティ・クリアランスというと、スパイ映画や戦争映画に出てくる文民に対する機密情報の解除というイメージがある。間違いではないが、正確ではない。具体的には3種類のクリアランス(適格性の承認)がある。
1つ目は、人物に対するクリアランスである。国家における機密事項を扱っても構わない人物であるか、またどの段階までアクセスを許すかを審査する。2つ目は、組織や施設に関するクリアランスである。大学や学部単位、あるいは研究所や建物の単位で、機密事項を管理できる体制があるかを審査する。3つ目は成果物に関するクリアランスである。研究の成果物について、国家の軍事機密に属するかを検討して、審査結果次第では、極秘扱いにする場合もあれば、場合によっては民間での活用を許可するというものだ。
これは軍が予算とともに研究プロジェクトを囲い込んで、民間の人材を使うだけではない。
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