バイデンのサウジ訪問につき米国内ではメディア、民主党左派、保守党、人権活動家等から強い批判が沸き上がっている。バイデン擁護論はほとんど見られない。
人権だけで外交はできない
リベラル派は、反体制ジャーナリストのカショギ氏の殺害に深く関与したとされるMBSにバイデンが甘い態度をとったことを非難する。特にワシントン・ポスト紙は激しく攻撃している(例えば、7月17日社説‘In the Middle East, Biden’s policy bumps into U.S. principles’)。
しかし、今回のサウジ訪問が綿密に計画され大成功だったとは言えないが、バイデンの意図したサウジ訪問の目的は十分に理解できる。バイデンは、7月9日付けのワシントン・ポスト紙への寄稿記事‘Why I’m going to Saudi Arabia’の中で、大きな地政学的問題や世界エネルギー市場の安定化のためにサウジに行くのだと説明していた。
バイデンとしては、サウジ訪問のリスクを承知の上で最終的に訪問に踏み切ったのであろう。バイデンに他の策があったようには思えない。
人権の重要性は言うまでもないが、人権だけでは外交にならない。独裁者とディールしないと言うだけでは外交にならない。人権は不可避的に、レアル・ポリティーク(現実政治)と併せて取り扱わなければならない。