2022年12月3日(土)

世界の記述

2022年7月18日

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藤原章生 (ふじわら・あきお)

記者・作家

記者・作家。北海道大学工学部卒。1989年より毎日新聞記者。ヨハネスブルク、メキシコ市、ローマなどに駐在。2005年、『絵はがきにされた少年』(集英社)で開高健ノンフィクション賞受賞。近著に『ぶらっとヒマラヤ』(毎日新聞出版)。
 

 

 「米国は自信を取り戻せるのか」。この問いの中に、いくつかの新たな疑問が隠れている。米国が自信に満ちていたというのは本当だろうか。いつのことだろうか。日本を再教育し「民主主義」を輸出しようとした戦後間もないころか。エゴのない主人公が悪者を成敗し去っていく米映画「シェーン」など西部劇が量産された古き良き時代、1950年代から60年ごろを指してのことか。だが、先住者からの土地強奪だった西部開拓を今も素直に評価する人は少ない。 

台湾防衛の軍事的関与に「イエス」と答えたが…… (REUTERS/AFLO)

 どう長く見ても、筆者には69年に米国人が月面着陸したころを頂点に、米国人のプライド、自信は下り坂に見える。西部劇に出ていたロナルド・レーガン氏が大統領になった80年代はどうか。レーガノミクスともてはやされたが、蓋を開けてみれば、今や世界中の庶民が不平を言い始める新自由主義を広めたのだから、80年代は自信というより過信の時代だったと言える。

 ベトナム戦争はもちろん、直近で言えば、2001年の米同時多発テロを理由に、アフガニスタン、イラクへ攻め入った米国は、利権を守り軍事関連の産業を伸ばしはしたが、周囲からの信頼を失った。戦後使われ始めた「世界の警察官」という呼び名は否定的なニュアンスをも伴うようになった。イラク侵攻の言い分だったフセイン政権による大量破壊兵器は見つからなかったにもかかわらず、政権からは総括の言葉は聞かれないままだ。

 10万人を超す現地の市民のみならず自国の若者を死なせながら、非難され、感謝されない。こんなことを続けても意味がないと思う米国人が増えるのは自然であり、オバマ、トランプ政権を経て、米国は内向きになっていった。昨年のアフガン撤退も、ウクライナ情勢での振る舞いも、米国の腰が引けているように見えるが、世論調査が示す通り、そんな政府の姿勢を多くの米国人が支持している。

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