2024年11月26日(火)

World Energy Watch

2013年4月22日

 近年のプロジェクトは市場メカニズムへの信奉を強め、民間の資金でインフラ建設を促す傾向にあるが、実際にはそこにジレンマが生じている。連系線やパイプラインを規制料金のもとで、すべての主体に利用させることを前提にすると、投資回収の見通しが長引くために建設へのインセンティブが働かない。従って、現状ではEU規則の適用除外を申請した上で、民間資本によるインフラ建設が認められるものもある。このような矛盾を抱えつつも、現実にはインフラ拡充により経済活性化が期待できるので、良き政策選択とみなされている。

 EUは昨秋、ノーベル平和賞を授与されたとは言え、金融危機がまだ沈静化していないので、経済政策の運用が楽観視できる状況ではない。エネルギー政策については、低炭素社会実現に向けたグリーン電力の普及もサポートしながら、ノルウェーのような非加盟国やロシアのような資源大国との協調を視野に入れ、常に安定供給を長期的な視点から考慮している。複数国の合意形成は容易ではないが、着実に市場開放と公的支援のバランスをとりながら、雇用拡大と経済成長を図ろうとしている。「ユーロ」のように極端な統一が失敗を招く点も反省材料であるが、試行錯誤を繰り返す実験から前進できている点は評価できる。わが国もアジアの中で孤立することを避けるためにも、国際レベルでインフラ基盤を強化するための一歩を踏み出す必要がある。

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