値下げで成功する法則
-その1:変動費が少ないこと-
さあ変動費と固定費が分かれば準備完了だ。マクドナルドの事例に戻ろう。ここで100円バーガーに値下げする前の、「210円のコスト・利益の円グラフ」を見てみよう。
図表2 210円バーガー
1個210円のハンバーガーについて、様々なコストが掛かっている。原材料費や社員の給料、賃借料、広告費などなど・・・。これらのコストをすべて差し引いて残った1個当たりの利益はなんと「12.9円」しかない。210円のハンバーガーを売って、たった12.9円の儲け。
ここで並の経営者なら、値下げという行為自体を思いつかないのではないか?ところがマクドナルドは敢然と値下げして大増益を達成した。さて、このメカニズムはどうなっているのだろう?
・・・その謎を解くカギが「変動費と固定費のバランス」だ。
実はこのハンバーガーに係わるコストの内、変動費は原材料費だけ。その他はすべて固定費的な性格を持つコストだ。ということは、210円ハンバーガーに掛かる変動費は57.5円。意外に低いぞ。さあ、ここで値下げ戦略成功条件の1つ目を確認しよう。
それは・・・
「商品1個当たりの変動費が少ないこと」
たとえばジュースを80円で仕入れて100円で売っているようなお店の場合、80円で仕入れたモノを80円以下で売ることはありえない。ということは、20円しか値下げ可能な幅がないわけだ。すべての商売において、変動費以下の値段で売ることはありえない。だから変動費の割合が高い商売では、そもそも値下げという戦略が取りにくい。値下げは固定費が多いコスト体質に向いている戦略なのだ。
マクドナルドは210円のハンバーガー1個に57.5円の変動費だけという「変動費の少なさ」によって値下げ戦略を行うことができた。