2022年12月5日(月)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年8月20日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

資源争奪戦の先に待っていること

 サンマの漁獲枠には、形骸化した獲り切れない枠が、公海とEEZ・排他的経済水域(日本・ロシア)に一応あるだけです。しかし、すでに各国とも分かっているはずですが、禁漁するか、科学的根拠に基づく国別の漁獲枠設定なしには、サンマ資源を回復させる手立てはありません。このままでは資源は壊滅的となり、共倒れします。勝者はいません。

 同じ資源を各国で獲り合って潰してしまった例はいくつもあります。その中でも有名なのは、国際的な水産エコラベルである海洋管理協議会(MSC)認証ができるきっかけになった、東カナダのマダラ資源の崩壊。200カイリの設定により米国のスケトウダラ漁場から撤退した漁船が、ベーリング公海に漁場を見つけて資源を潰してしまったスケトウダラ漁場。漁業という人間の力の影響は計り知れません。

(出所)水産白書 写真を拡大

 上のグラフはサンマの漁獲量(青の折れ線)と魚価(赤の点線)を示しています。2021年の価格はキロ620円と600円を超えており、もはや大衆魚の価格ではなくなってきています。10年~14年の平均価格はキロ120円(漁獲量20万トン)でした。約5倍に高騰しています。

日本が交渉で不利になって行く

 サンマ資源を回復させていくためには、各国の漁獲枠配分を決めねばなりません。現在設定されている枠は、21年と22年と2シーズン共に33.4万トン。しかし21年の漁獲量実績は全体で9.5万トンと、漁獲枠の3分の1に過ぎません。各国とも獲り切れない枠で操業しているため、枠に文句はでませんが、資源管理に効果がありません。

 しかし、科学的根拠に基づいた漁獲枠設定となると、大幅に数量が減ることになります。それを各国に割り振るとなると枠が緩かった時と異なり事情は一変します。割当のベースになるのは、近年の漁獲実績となり易く、21年には2割ほどと大幅に減っているシェアを根拠にされかねません。

 2000年以前には8割漁獲していたと主張していても、国益に絡むことです。このため、台湾・中国と、すでにサンマ狙いで漁船に投資し、漁獲実績を作っている国々は、時計の針を戻すような交渉には、容易に引き下がらないことでしょう。もしサンマの資源を回復できても、全体の漁獲量の2割程度しか漁獲できない可能性があります。

 時間の経過と共にシェアが下がる可能性がある一方で、このまま各国がサンマを獲り続ければ資源が回復する望みは有りません。

 日本は、非常に厳しい立場になってしまいました。しかし極めて厳しい立場でも、優先するのは資源の持続性です。サンマがいなくなってしまえば、元も子もありません。

 
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 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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