タメルラン容疑者は、イスラーム戦士を崇拝し、チェチェン関連の動画に加え、昨年8月にはダゲスタン共和国の過激派リーダー(ロシア治安部隊が昨年12月に殺害)が覆面姿の過激派2人とともに映る映像を動画サイトに投稿していたという。また、毎週金曜日にモスクに行き、1日5回礼拝するようになり、昨年以降は、ボストン郊外のイスラーム教礼拝所で、説教する指導者に「あなたは不信心者だ」と叫ぶなど、過激化が進んでいた。
兄が米国社会で挫折し、家族しか支えがなくなってしまった一方、弟ジョハルは極めて上手く米国社会に溶け込み、また優秀だった。マット・デイモンら俊才を排出した名門公立高Cambridge Rindge and Latin Schoolを優秀な成績で卒業したが、レスリング部の部長として活躍もし、文武両道だった。
高校時代は、冗談で周りを笑わすなど、とても快活な性格で、同級生は「頭が良いし、面白いし、優しかった。本当に人気があった」と語り、好意を寄せていた女生徒も多かった。
2011年にはケンブリッジ市から2500ドルの奨学金も獲得し、マサチューセッツ州立大学ダートマス校に通っていた(テロ発生後も18日まで通学していたという)。2012年9月には兄より先に米市民権も得ていた。弟については、周囲の評価が極めて良く、友人達は、テロは兄の教唆によるものに違いないと口を揃えるが、他方で、「みんなに受け入れてもらおうと必死に努力しているように見え、同情を感じた」と述べる同級生もいた。
完璧な英語を話し、普通のアメリカ人に見えながらも、自分の世界観はイスラームに基づいていると記したり、大学で海洋生物学を専攻していたにもかかわらず、歴史の教授に「チェチェンの歴史に関心がある」と話を聞きに行ったり、自らのSNSにイスラームへの信仰についても記載していたようだ。
両親は息子達を信じ……
ダゲスタンに住む両親も、息子達は本当に優しい子達で、テロなど起すはずがないと今も、事件を受け入れられずにいる。
実際、両親との関係はとても緊密だったようで、銃撃戦の直前まで母親と電話をしていたようだ。タメルラン容疑者が「警察が撃ち始め、追跡してきた」「ママ、愛している」と話したあと、電話が切れ、銃撃戦で死亡した模様だ。
両親は、息子が犯人として米連邦捜査局(FBI)にでっち上げられたのだと主張している。何故なら、実は、「イスラーム過激派の信奉者の可能性がある」という情報を得たロシア政府の要請により、2011年にFBIはその過激派との関係につき、タメルラン容疑者について聴取をしていたが、「問題なし」という結果だったのだという。