2024年7月22日(月)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年9月2日

人の感覚と一致した
AIによる劣化予測

 兵庫県北中部にある朝来市は約1万3500戸、3万人への給水を担う。市で管理する水道管の総延長は約420㌔メートルに及ぶが、システム導入時、上下水道課の職員はたった4人だった。

 水道管の法定耐用年数は40年である。朝来市の水道管は1990年代に敷設が進んだため、法定耐用年数を超えるものは多くないが、それでも漏水は年間30件程度発生していた。同課の小谷康人課長は「敷設からの経年数を基準とした場合、今後、多くの水道管が一斉に更新時期を迎えることになる。現体制でそれに対応するには限界がある」と危機感を募らせていた。

 水道管の劣化には管の材質や土壌の性質、交通量の多さなど、さまざまな要因が関係しており、管によっては法定耐用年数を超えても使用できるものが多くある。そのため、劣化度合を考慮せず、単に古い順に更新を進めることは、まだ使用可能な水道管の取り換えに費用をかけることになり、財政面での負担も大きくなってしまう。

 だが、「地中にある水道管は状態が分からない。結局、経年数で更新の計画を立てるしかないと考えていた」と小谷氏は語る。

 職員の間ではこれまでの漏水経験などから劣化しやすい水道管のおおよその見当はついていたというが、そうした〝暗黙知〟を言語化するのは難しい。加えて、上水道管路の補修にかかる費用は利用者が支払う水道料金から賄われている。そうした財源のもと、職員の感覚を根拠とした更新計画を立てることは現実的ではなかった。

 このような状況の中、職員の感覚をデータによって実証してくれたのがフラクタのAIだった。同社のシステムは、事業体が持つ水道管に関するデータ(配管素材・使用年数・過去の漏水履歴など)と、同社が独自に収集した1000以上の膨大な環境データ(土壌・気候・人口など)を組み合わせて、水道管ごとの破損確率を解析し、その破損確率のレベルによって色分けされたデータを地図上に表示する。

水道管ごとの劣化予測結果に応じて
地図上に色分けして表示される

(出所)フラクタ提供のサンプル資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 この「AIによる劣化予測」に、朝来市の職員たちも当初は懐疑的だったという。「われわれの技術を信頼してもらうには有効性を実感してもらうことが重要」というフラクタの前方大輔氏は、予測の仕組みを解説することに加え、実際に試行検証することにより、その精度を示した。


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