2024年7月22日(月)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年9月2日

 効果は明確だった。破損確率が高いと診断された水道管と、過去に朝来市で発生した漏水実績の約半数が一致したのである。さらに、「水道管データの色分けが驚くほど職員の感覚と一致していた。そこから職員の目の色が明らかに変わった」と小谷氏は話す。同市は20年にシステムの導入を決定し、翌年に過去の漏水実績などを学習させた「朝来市専用モデル」をフラクタとともに開発した。

 今年度から劣化予測を反映した更新を進めているため、費用対効果を測れるのはこれからだが、「漏水が抑制できれば、修繕費の削減や職員の負担軽減につながる。市民に安全な水を安定して届けるという使命を果たすことにも直結する」と小谷氏は話す。さらに、同課では破損確率の色分けデータを全職員に共有している。他部署と連携し、水道管の更新を他の工事と同時期に実施することで、道路の掘削・舗装にかかる費用も削減可能になるという。

経験や知識の埋没を防ぐ
人とデジタルの新たな関係性

 地域経済を専門とする大和総研主任研究員の鈴木文彦氏は「地方の自治体において、職員の高齢化や担い手不足は今後避けられない課題だ。一方で水道を含め、インフラ業界では技術力は個人に帰属し、経験年数に比例して向上する傾向にある。事故事例のデータベース化など、デジタルの力を借りることで個人の知見を全体の財産として昇華できる」と指摘する。

 事実、朝来市上下水道課で最も若い宮崎省吾氏は「先輩職員の経験がデータによって可視化されたことで、経験年数の浅い自分も先輩と同じようなレベルで業務に取り組むことができるようになった」とその効果を実感する。

 行政サービスにおいてもベテラン職員の暗黙知の継承は不可欠だ。その貴重な財産を次世代に継承するためにデジタルの力をフル活用する──。

 足元を見つめれば、ピンチをチャンスに変えられる隠れた業務がたくさん眠っているのかもしれない。

 
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Wedge 2022年9月号より
漂流する行政デジタル化 こうすれば変えられる
漂流する行政デジタル化 こうすれば変えられる

コロナ禍を契機に社会のデジタルシフトが加速した。だが今や、その流れに取り残されつつあるのが行政だ。国の政策、デジタル庁、そして自治体のDXはどこに向かうべきか。デジタルが変える地域の未来。その具体的な“絵”を見せることが第一歩だ。


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