話し手・綱川明美
聞き手/構成・編集部(川崎隆司)
職員の採用が増えていないにもかかわらず、少子高齢化に伴う社会保障サービスを始め、行政業務の守備範囲を広げている自治体も多い。新型コロナウイルスのワクチン接種対応も3年前には存在していなかった。従来のアナログな仕事の進め方を改め、デジタル技術を採り入れながら行政業務の最適化を図ることは、全国の自治体にとって喫緊の課題だ。
弊社が提供するAIチャットボット 「Bebot」は〝24時間稼働の接客窓口〟として、仙台市や富山市など100以上の自治体に導入されている。開発当初は訪日外国人向けの接客機能をメインとし、多言語型AIチャットとして国内ホテルに導入されていたが、その後、成田空港や東京駅といったターミナル施設にも広まり、2019年から自治体にも採用され始めた。
「Bebot」では、行政手続きに関する問い合わせ対応や観光案内など、これまで自治体職員が対応してきた簡易な窓口相談をAIチャット機能によって代替するが、その過程を通じて従来業務の見直しを提案することも多い。行政内各課にまたがって発生する業務も、「窓口相談」という住民視点の〝入り口〟から見ればつながっており、チャットボットのアルゴリズムを構築しながら、質問内容や業務改善について職員の方と一緒に知恵を出し合うのもわれわれの重要な役割だ。
そうしたやりとりの中で、AIチャットボットの新たな利点にも気づいた。ある自治体で育児関連のチャットボットを提供した際、市役所側では当初、子ども手当などの申請様式に関する質問が多いだろうと想定していたが、いざサービスの提供を開始すると「一時的に子どもを預かってくれる施設は?」といった担当課としてはニーズが低いと思っていた質問が利用者から多く寄せられた。住民のインサイト(隠れた欲求や動機)をデータとして〝見える化〟することで、行政サービスを提供する自治体と受け取る住民間の認識ギャップを埋めるツールとなるのだ。
さらに、多くの導入自治体から「住民からの質問が多い分野はどれか」「質問の文字数をどれくらいに設定すれば有効回答を得やすいか」といったデータが集まるため、それらの傾向を分析することで行政サービス改善につなげることもできる。