2022年9月27日(火)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年9月2日

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 高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化が進んでいる。とりわけ、水道事業はわれわれの生活に欠かせないインフラの一つだが、老朽化による水道管の破損事故などが全国各地で相次いでいる。

 厚生労働省は2018年、水道法を改正し、市町村によって運営されている水道事業について、都道府県を旗振り役とした広域連携を推進する方向へと舵を切った。だが、水道事業は各市町村によってバラバラに運営されており、設備の老朽化度合いや水道料金も異なるなど、広域化には課題が多い。

 そうした中、積極的に広域化に取り組む自治体がある。兵庫県だ。

 市町村の水道事業を広域化するには、浄水場や水道管などの施設基盤の情報や運営システムの共有化は必須である。

 だが、当時の市町村では、その前に解決すべき課題が山積していた。「小規模な市町村では、浄水場や水道管などの施設情報の管理は紙ベースだ。市町村ごとに運営のシステムも異なっており、当初は何から手を付けるべきか頭を抱えることばかりだった」

 そう語るのは兵庫県が進める広域化の中心人物である、同県生活衛生課水道企画参事(当時)の芳中正明氏だ。

 芳中氏はまず、小規模市町村が水道を維持できるよう、基盤情報のデジタル化や効率的な水道管更新の検討から着手した。そんな時に偶然知ったのが米国に本社を置くスタートアップ企業の「フラクタ」だった。同社は、水道管の劣化状態をAIによって診断するオンラインツールを提供しており、日本では愛知県豊田市や福島県会津若松市をはじめ、30の事業体で導入実績がある(22年3月時点)。そのうち7つは兵庫県の事業体で全国最多だが、芳中氏がフラクタのシステムを提案した当初、市町村からは「職員は日々の業務に忙殺されており、新しいことには手が付けられない」「わけのわからないアメリカの会社が作ったソフトなんか信用できない」といった反応ばかりだったと芳中氏は笑う。

 そのような中でフラクタのシステムを県内で初めて本格導入したのが朝来(あさご)市だ。その背景には何があったのか。

朝来市では水道管の劣化状況をAIを用いて予測している (ASAGO CITY OFFICE)

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