18年にはやはり、東方経済フォーラムが9月10日から行われ、安倍首相も3年連続でウラジオストクを訪問した。ペスコフ・ロシア大統領報道官は「平和条約を巡って日本側に過度の期待が存在しているとした上で、こうした問題で終局を見いだすのは相互信頼に基づいてのみ可能だ」と指摘した。
ロシア軍がシベリア極東地域で4年に1度行う大規模軍事演習「ボストーク2018」も実施された。公式発表では、兵士約30万人(実際には10万人以下との見方)、戦車など約3万6000両、艦艇約80隻、航空機約1000機が投入され、中国軍やモンゴル軍も参加した。
実施期間は9月11日~17日で、今年の「ボストーク2022」のように演習期間に対日戦勝記念日が組み込まれることはなかった。
19年にもウラジオストクの「東方経済フォーラム」に安倍首相が招かれ、27回目の日露首脳会談(9月5日)が行われたが、これまでのものと比べ、この時期に強調される友好的な演出も微妙に変わってきた。トルトネフ副首相兼極東全権代表はフォーラムの総括記者会見に臨み「クリル諸島は日露の共同活動でより急速な発展が可能だが、日本側の決定欠如で発展が抑制されている」と日本側の姿勢を問いただした。
「歴史カード」を頻繁に切るロシア
明らかに流れが変わったのは、新型コロナウイルス禍で東方経済フォーラムが中止された2020年だ。安倍首相は8月下旬に辞任。これで「シンゾー・ウラジーミル」の首脳関係が途絶え、北方領土問題解決の機運は低下した。
ロシア政府は歴史カードを切った。9月2日には、国防省がサハリン南部およびクリル(千島列島)上陸作戦を含む第2次大戦時の「極東解放」を巡る公文書を公開し、サハリンと中国北東部での日本軍の挑発や住民への犯罪が示された。
メドベージェフ元大統領は、全露青年愛国フォーラムのオンライン会合に出席し、クリルでの活動に対する日本の反応は「無駄なものだ」とし、「われわれの士地は全て、われわれのものであり続ける」と言明した。
そして、昨年もやはり第2次大戦の敵国である「軍国主義日本」がアピールされた。9月2日に、外務省のザハロワ報道官が記者会見で「第2次大戦の結果は1945年2月付けの降伏文書、および日本自身が56年に加盟国となった国連の憲章においてゆるぎないものとなった」と日本政府が一切認めていない認識を強調した。
ザハロワ氏はさらに「東京当局は形成された歴史的事実を完全に認めること、一般に認められている第2次大戦の原因・状況・結果への見解を共有することを現在に至るまで拒否している」として遺憾の意を表明するまでに至った。
今年2月24日に「プーチンの戦争」が始まってからは、ウクライナ・ゼレンスキー政権を支援する日本は「非友好国」と位置付けられ、日本を敵対視するような現象が増えた。
4月6日には外務省のザハロワ報道官が「日本の現政権は、前任者らが長年つくり上げてきた協力を一貫して破壊している」と批判した。
4月9日には、左派政党「公正ロシア」党首で前上院議長のミロノフ氏が北方領土交渉に関し、日本は第2次大戦の結果の見直しを求めたが、「明らかに失敗に終わった」と主張。さらに、「一部の専門家によると、ロシアは北海道にすべての権利を有している」と日本への脅しとも受け止められる見解を表明した。