2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月14日

 また、議員間交流については、ペロシ米下院議長以前から欧州諸国の議員団の訪台もあり、ペロシ議長訪台後も、米国議員団、更には日本議員団の訪台が実施されている中で、インド側もこれを再活性化する地合いはある。但し、大国インドが、このような流れにそのまま乗ることを良しとするかはわからない。

日本が期待するインドの役割

 一方、未だに「一つの中国」原則について何も表明していないというのは、大国インドならではのことだ。ちなみに、「一つの中国」原則を認める、認めない、というのは危険な単純化だ。ご承知の通り、日本は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認」しているが、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」との中華人民共和国政府の立場については、「十分理解し、尊重」しているだけで承認はしていない。両岸が話し合いにより平和裏にその将来を決める場合には、日本はそれを「基本的には」内政問題として対応するが、武力による統一となれば話は別である。

 インド側が近い将来に「一つの中国」原則について明確な立場表明をする可能性は、本件が中印国境の主権の問題と結び付けられているだけに、必ずしも高くないように思われるが、以上の注意点は、機会があるたびにインド側にも提起して損は無いように思う。

 最後に、台湾有事において、日本は、インドに対してどのような役割を期待できるのか。台湾有事を抑止するための現時点での喫緊の課題は、日米間の計画検討の精緻化と日本国内の体制整備だと思うが、その帰趨が世界の潮流に大きな影響を与えるインド、それに加えて台湾海峡通行不能となった場合の代替シーレーンを提供する立場にあるインドネシアなど、日米以外の主要プレーヤーに対して何を求め、何をすべきなのかは、日米間で早急に十分擦り合わせるべき重要な課題である。

   
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