2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月14日

 2022年8月19日付Foreign Policy誌は「インドは台湾と関係強化すべき時」とのインドのオブザーバー・リサーチ財団(ORF)副理事長のハルシュ・パントとシャシャンク・マトゥー同研究員の論説を掲げ、インドは伝統的な対中配慮を変え、台湾との関係強化に具体的に動くべき時だと論じている。

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 中印国境での衝突以降、インドは台湾への大きな関心を示す。台湾の半導体はインド経済、特に自動車分野にとり必須だ。コロナ禍と中国がサプライチェーンを武器としていることで、インドは重要技術の自国生産能力強化を進めている。台湾海峡での中国の敵対行動で台湾からの半導体供給が妨げられるのではないかとインドは恐れており、台湾の半導体企業に製造工場のインド建設を勧めている。

 しかし、インドは、中国との関係で、台湾問題に慎重に対応してきた。インドの対中貿易は1000億ドルで、国境問題もあるし、中国はパキスタンの同盟国だ。インドは貿易・投資誘致には熱心だが、台湾が必要とする政治的支持を与える積りは無い。インドは世界保健機関(WHO)等の台湾オブザーバー参加を公に支持していない。

 貿易、観光等問題の無いテーマに焦点を当てるとのインドの台湾政策は最早地域の現実を反映していない。中国が台湾に封鎖や侵攻をすれば、自由で開かれたインド太平洋へも致命的な影響を及ぼす。インドの台湾への新アプローチは経済・政治双方に焦点を当てるべきだ。

 インドは2つの政策変更を至急検討すべきである。第一に、主要7カ国(G7)と共に台湾が技術的国際機関でオブザーバーとなることを支持すべきである。公の支持でインドは台湾ビジネスと友好的関係を作れる。

 第二に、定期的な政治的交流を復活すべきである。2016年創設の両国議員友好フォーラムの活動は低調のままである。もしインドが早期に外交攻勢をかければ、台湾から暖かく迎えられる可能性がある。

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 インド有数のシンクタンクORFの研究担当副理事長パント他の論説だけに、インド政府に対する具体的提言がなされている。

 まず、インドが台湾問題を巡り未だにここまで中国のことを気にした対応を取っていることについては、若干驚いた。WHOへの台湾のオブザーバー参加についてさえ未だに公に立場を明らかにしていないというのは、この論説が言うように、いかにも地域のみならず世界の「現実を反映していない」。最初にすべき政策変更の一つとしてこの点を上げているのは正に的を射ていると思う。


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