インバウンド需要の内訳を見ると、金額の大きい順に、買い物代が2.5兆円(10〜12月では0.6兆円)、宿泊費1.8兆円(10〜12月では0.4兆円)、飲食費が1.3兆円(10〜12月では0.3兆円)となっている。ちなみに、日本のインバウンドの課題とされているコト消費など娯楽等サービス費は0.2兆円(10〜12月では0.06兆円)だ。
訪日外国人が個人旅行で自由に行動できるとすれば、日本人も驚くような地域にも訪れるので、地方の観光業界にも大きな恩恵を与えるはずだ。
そこで19年の都道府県別のインバウンド消費を前提として、機械的にマクロのインバウンド消費額を都道府県別に割り振れば、10~12月分のインバウンド消費額は、下記の通りとなる。
以上のように、訪日外国人に対して完全開国すれば日本全体で6.8兆円(10〜12月では1.7兆円)の需要が得られ、都道府県によって多寡はあるものの、コロナ対策禍で傷んだ地方経済へも大きな福音となることは間違いない。
水際対策の撤廃は財政出動も必要ない
このように考えれば、外国人に対して完全開国に転じるだけで日本全体では6.8兆円(10〜12月では1.7兆円)の需要が創出されるわけなので、首相が掲げる5兆円は十分達成できるのだから、全国旅行割(全国旅行支援)や都道府県民割のような、時間とお金に余裕がある層にさらに税金をばらまいて旅行の補助をする不公平な政策を行う必要も無くなる。
実際には、全国旅行割や都道府県民割は赤字国債を財源としているのだから、それこそ若者から高齢者への世代間の再分配が発生しており、「あなたのお得は誰かの損」であることを、利用者も為政者も忘れてはならない。
新型コロナ対策禍のツケを負わされるのは子や孫たちである。緊急事態だからといって後先考えずにばらまくのではなく、水際対策の撤廃などお金を使わなくとも実行できる政策に注力する必要があるだろう。