岸田文雄首相は、9月22日夜(日本時間)の記者会見で、新型コロナウイルスに伴う水際対策に関し、1日当たりの入国者数5万人の上限撤廃と個人旅行の解禁、ビザなし渡航の解禁を、10月11日から実施すると表明した。これにより新型コロナ禍で始まった一連の鎖国政策がほぼ解除される見込みだ。
また、報道によれば、10月3日召集の臨時国会での岸田首相の所信表明演説で、「年間5兆円超」の訪日観光客消費を目指す考えを明らかにするとのことだ。
新型コロナ禍の鎖国政策
2020年3月以降、日本は外国人旅行者が日本国内に新型コロナウイルスを持ち込むことを恐れて、外国人に対して堅く門戸を閉ざしてしまった。
かつて江戸幕府により行われた鎖国は完全に国境を閉ざしたのではなく、江戸幕府の管理の下で外国(オランダと中国だけ)との情報や物資のやりとりを制限したものであることを想起すれば、コロナ禍の歴代内閣が行ってきたインバウンド政策は外国人の入国と日本国内での活動を、厳しい管理下に置く鎖国政策以外の何物でもなかった。
こうした鎖国政策の結果、12年末のアベノミクスによる円安政策や観光ビザの緩和などの効果もあって、7年連続過去最高を記録するなど、右肩上がりに増えていたインバウンド消費は、観光庁「訪日外国人消費動向調査」によれば、コロナ前の19年の4兆8135億円から20年7446億円(試算値)、21年には1208億円(試算値)と激減してしまった。
こうした鎖国措置は世界的に見れば外国人の入国制限が緩和されてきたにもかかわらず、日本では頑なに堅持されてきた。あちこちで批判があがったのを気にしてか、今年6月からは観光目的の入国を、添乗員付きツアーを条件に許可し、1日当たりの入国者数上限も2万人に拡大、9月からは添乗員なし、入国者上限を5万人に拡大するなど徐々に開国に舵を切ってきた。
しかし、9月の水際対策の緩和では、相変わらず、航空券や宿泊先について旅行会社が手配しない個人旅行については認められてはいなかった。